莉子の本棚
感想

茶道の世界を通じて人生の味わい方を教えてくれる素敵な本です。著者が二十五年間かけてお茶と向き合う中で、失恋や父との別れなど、人生の辛い経験をどう受け止めてきたのかが丁寧に綴られています。 私も同じくらいの人生経験を重ねてきましたので、失われていくものとどう付き合っていくか、という問題は他人事ではありません。けれどこの本を読んでいると、著者が「がんじがらめの決まりごと」の中にこそ自由を見出していく様子が、なんとも美しく感じられました。型を守ることで、かえって心が解放されていく。そういう逆説的な真理が、ここにはあります。 雨の一粒一粒が聴こえるという表現も印象的です。加齢とともに、私たちは感覚が衰えていくと思い込みがちですが、むしろ丁寧に生きることで五感がより研ぎ澄まされるのかもしれません。ボランティア活動の中でも、今この瞬間を大切にすることの重要さを改めて考えさせられました。穏やかで深い読書の時間になりました。