近藤の本棚
推し、燃ゆ

推し、燃ゆ

宇佐見 りん 河出書房新社 2020年9月11日

感想

芥川賞受賞作だし、推し活について書かれているということで期待しながら手に取りました。最初は、ファンダムの空気感をどこまでリアルに描けているのか、やや懐疑的だったのが正直なところです。 ですが、読み進むにつれて、その懐疑心は払拭されました。この作品が扱っているのは、単なる推し活の話ではなく、人生で傷ついた人間がいかにしてその傷と向き合うのか、という根本的なテーマなのだと気づきました。主人公の「推す」という行為が、回復へのプロセスとしてこんなにも緻密に、そして切実に描かれた作品は珍しい。 文体も丁寧で、エッセイ的な思考の流れと小説としての物語性がうまく融合しています。推し活の経験がない人にとっても、人間関係や自分の人生について考えさせられる深さがあります。ただし、心理描写が非常に濃密であるため、読了にはある程度の集中力と時間が必要です。感情的な部分に共鳴できるかどうかが、評価の分かれ目になるかもしれません。 慎重に本を選ぶ方にもお勧めできる、真摯で価値のある一冊です。

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