近藤の本棚
ちょんまげ手まり歌

ちょんまげ手まり歌

上野瞭 中央公論新社 2026年2月20日

感想

1968年初刊のディストピア時代小説ということで、歴史的な価値と現代的な視点から興味を持って手に取りました。「やさしい殿さま」が統治する「やさしい村」という設定は、一見ユートピアを装いながら、その裏側を問い直す——という構造は、プログラミングでいう表層と本質の矛盾を扱う難題に通じるものがあります。 読んでみると、確かに児童文学の枠を超えた問題提起があります。ただ、正直なところ、現代の読者にとってはやや説教的に映る箇所もありました。作品の歴史的意義は十分に理解できるのですが、情緒的な共感や物語への没入という点では、期待値よりも一歩引いた感じが残ります。 復刊企画として注目される理由は分かります。古典を再評価することは大切ですし、この作品が児童文学の歴史に刻んだ足跡も尊重します。ただ個人的には「なるほど、そういう意味があったのか」という知的な理解に留まってしまい、心が揺さぶられるような体験には至りませんでした。思想性と物語性のバランスについて、もう一度読み返してみる価値はあると思います。

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