近藤の本棚
感想

江戸時代の司法制度を舞台にした歴史冒険小説だと聞いて、正直なところ少し警戒心を持ちながら手に取りました。ただ、それが杞憂だったことを何ページ目かで痛感しました。 本作は宝暦年間の実在する訴訟事件をベースにしながらも、小説としての説得力と興奮を完璧に両立させています。地方から江戸に出てきた農民たちが権力に立ち向かう緊張感、当時の社会構造の複雑さ、登場人物たちの葛藤——これらが丁寧に積み重ねられていく構成は、エンジニアとしての私の「論理的に積み上げられた構造」を好む感覚とも合致しました。 史料に基づきながらも物語として一気読みさせる力強さは見事です。ただし、江戸時代の法制度や社会背景についての予備知識があるかないかで、読み心地が結構変わるかもしれません。その点だけ、慎重に検討している方には事前情報の確認をお勧めします。それでもなお、読む価値は十分にある傑作だと感じました。

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