近藤の本棚
感想

恩田陸の新作を手に取ったのは、「呪われた小説」という設定に惹かれたからだ。エンジニアである自分は、問題解決の過程を追うのが好きで、この本はまさにそうした謎解きの快感を与えてくれた。 クルーズ船という限定空間で、『夜果つるところ』という架空の作品をめぐる複数の視点が交錯していく構成は秀逸だ。映画化の失敗、登場人物たちの証言、そして主人公が読み返した時に感じる「違和感」—その一つ一つが丁寧に積み重ねられていく。論理的な思考を要求される職業柄、こうした層状に積み上がる物語構造が心地よい。 ただ、中盤から後半にかけて解釈が二転三転する展開には、若干の疲労感も感じた。綿密さゆえに、読者側もかなりの集中力を要求される。ページを折り返しながら注釈を取るような読み方が必要な作品である。 それでも、小説そのものが持つ可能性や、物語の多層的な読まれ方について深く考えさせられた。エッセイ的な考察と小説の快感が融合した、知的で面白い一冊だ。

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