みかんの本棚
感想

メルロ=ポンティの大著に初めて真摯に向き合った。これまで二次文献で概要を掴んだつもりでいたが、原著を読むと全く別の深さが開けてくる。 知覚という日常的な営みが、実は思想史上いかに根本的な問題であるか。主体と客体の二項対立を超え、身体を通じた世界との関わりをこれほど綿密に記述した哲学書は稀有だ。抽象的な議論に陥りやすい現象学において、著者は知覚の具体的な現象——反転図形から奥行き知覚まで——を丹念に分析していく。その方法論の厳密さに感服する。 ただ、分量と密度の濃さは覚悟が必要。段落ごとに立ち止まり、何度も読み返す箇所が多い。翻訳の質も高いが、それでも原語の哲学的厳密さの一部は逃れている印象は拭えない。 しかし、この困難さこそが重要だ。フリーランスとして自分の知覚や思考の枠組みを問い直す必要があるとき、この本は格好の相棒になってくれる。読み込むべき価値のある一冊である。

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