文庫版 死ねばいいのに
講談社 | 2012/11/01
みんなの感想
京極夏彦の『死ねばいいのに』を読み終わった。予定調和を破壊するミステリとしての評判は耳にしていたが、実際のところ、正直なところ微妙な印象が残った。 作品の基本構造は興味深い。殺人事件を軸に、登場人物たちの証言が交錯し、嘘が重なっていく過程で真実が浮かび上がるという仕掛け。従来のミステリの枠を外そうとする意志は感じられる。ただし、その実験的な手法が必ずしも効果的に機能しているかというと、読んでいて引っかかる部分が多かった。 交わらない会話という表現は的確だが、その「交わらなさ」が時として冗長に感じられてしまう。謎解きの快感よりも、もどかしさが勝ってしまう局面もある。 とはいえ、人間の心の暗部を掘り下げようとする執念は買える。表面的な推理サスペンスではなく、心理の深層へと切り込もうとするその姿勢は、自分が求めている読書体験に近い。ただ、それが完全に成功しているかどうかはまた別の問題だ。 ベストセラーが必ずしも最高傑作ではないことを改めて認識させてくれた一冊。それも含めて、読む価値のある作品ではあります。
話題のベストセラーということで、軽い気持ちで手に取ったんですが、正直なところ、途中で読むのが辛くなってしまいました。 京極夏彦の作風は確かに独特で、会話を通じて人間の心理を掘り下げていく手法は理解できます。ただ、登場人物たちの対話があまりに交わらず、同じような掛け合いが延々と続くんですよね。謎を深めるというより、読んでいてもどかしさが募るばかり。 事件の真相に迫るというより、人間の言葉の曖昧さとか、心の奥底にある暗さを描きたいんだろうなと感じますが、62歳の身からすると、もう少し読みやすい展開を期待してしまいます。確かに文章は上手いし、知的な作品ではあるんですが、それが逆に気軽な読書の邪魔になった感じで。 好き嫌いの分かれる一冊だと思いますが、僕のような気軽に物語を楽しみたい派には、少々疲れる作品でした。
ベストセラーになったってことで手に取ってみたんですが、予想外の面白さでした。京極夏彦の「死ねばいいのに」、タイトルだけ見ると衝撃的ですけど、蓋を開けてみると、人間関係の複雑さと心理描写の深さが本当に秀逸。 殺人事件を軸に、被害者のことを知る人物たちの証言から浮かび上がるのは、ただの謎解きではなく、人の心の奥底に潜む矛盾や嘘、そして真実との距離感なんですよね。誰もが何らかのウソをついている—その構図が絶妙に張り巡らされていて、読み進めるにつれてどんどん引き込まれました。 家事の合間に少しずつ読んでたんですが、気づいたら徹夜してました(笑)。会話だけで物語が進んでいく独特な手法も新鮮。ミステリーとしての興奮だけじゃなく、人間不信になりそうなくらい心が揺さぶられる体験ができます。短編集じゃなく一冊の小説として、このスケール感は本当に素晴らしい。気軽に読める娯楽性と文学的な深さのバランスが最高です。