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感想

著者の前作『幻夏』が好きで、この作品も気になって手に取りました。期待以上でした。 共謀罪で逮捕されようとした非正規工員たちが火災に乗じて逃走するという冒頭から、一気に引き込まれます。単純な逃亡劇ではなく、格差や分断といった社会的なテーマが層状に重なっていく構造が秀逸。所轄の刑事・薮下視点で謎が解き明かされていくプロセスが気持ちよく、ページをめくる手が止まりません。 印象的だったのは、登場人物たちが決して白黒で分けられていない点です。正義と悪が相対的で、それぞれが自分の信念で動いている。4人の工員たちの背景にある人生や、キャリア官僚の野心まで含めて、複雑な社会構図が浮かび上がってくる。若い世代の切実さと、大人たちの権力闘争が絡み合う緊張感が本当に良かった。 文庫本のコンパクトなサイズながら、読み応えたっぷりで、大学院の忙しい合間に読むのにも最適でした。社会派青春群像劇というキャッチコピーの通り、作品の完成度の高さを感じます。

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