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使命と魂のリミット

使命と魂のリミット

東野 圭吾 KADOKAWA 2010年2月25日

感想

医学小説とサスペンスの融合ということで、かなり慎重に選んだこの一冊。正解だった。 心臓外科医という高度な専門知識が必要な職種を主軸に据えながら、隠された目的という個人的な執念が絡み合う構成が見事だ。医療現場の緊張感とそれを揺るがす予期せぬ危機が、物語を一気に加速させていく。著者の取材の深さがうかがえる医学的描写も信頼できて、没入感を損なわない。 フリーランスという立場で仕事をしていると、周囲の期待と自分の本当の目的のズレに悩むことがある。その葛藤が主人公・夕紀に重ねられて、単なるサスペンスでは終わらない人間ドラマとしての厚みを感じた。命を賭けるほどの想いとは何か、それを貫くことの代償とは何か。そうした問いかけが静かに胸に残る。 中盤からの展開は息もつかせぬほど。冷静に読み進めたつもりでも、ラストに向けて予想の斜め上を行かれた。48年生きてきて、なお新しい視点を与えてくれる作品に出会えるのは稀だ。これは間違いなく傑作。

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