Nのために
双葉社 | 2014/08/19
みんなの感想
久しぶりに一気読みしてしまいました。超高層マンションでの変死事件という設定だけ聞くと重々しいミステリーを想像していたのですが、それぞれのキャラクターが抱える淡い想いや切実な事情が丁寧に描かれていて、予想以上に引き込まれました。 20代の四人それぞれの証言が絡み合い、事件の真相へ向かっていく構成が見事です。真犯人が誰なのか、そして「N」が誰なのかというミステリーの要素と、登場人物たちの恋愛感情や人間関係の複雑さがうまく融合しているんですよね。公務員として毎日事務的な仕事をしているので、こういう人間ドラマを丁寧に追う読書時間は貴重です。 著者初の純愛ミステリーということでしたが、謎解きの面白さだけでなく、キャラクターたちへの共感や切なさまで感じられるバランスの良さが印象的でした。気軽に読める文庫版で、隙間時間を有効活用できたのも良かった。十分満足できる一冊です。
正直なところ、このタイプの作品は買う前にレビューを何度も確認してしまうんですけど、この本は後悔なく読めました。超高層マンションという限定された舞台で、一つの事件をめぐって複数の視点から真実が明かされていくという構成が想像以上に上手くて、引き込まれました。 特に良かったのは、各キャラクターの証言を聞いていく中で、こちらの推測が次々と覆されていく快感です。犯人が誰なのかを予想しながら読み進めるのが本当に楽しい。そしてタイトルの「N」が何を指すのかも明かされたとき、なるほど…!と納得できる仕掛けになっていました。 著者初の純愛ミステリーということで、恋愛要素とミステリーのバランスがどうなるか心配でしたが、むしろその組み合わせが物語に深みを与えていて良かったです。切なさが作品全体を包みながらも、謎解きの興奮を損なわない。そのあたりのクオリティは本当に高いと思います。軽くはない内容ですが、一気読み必至の傑作です。
最近、書店で目立つ場所に平積みされていたのでつい手にとってしまいました。高層マンションでの怪事件と、四人の若者それぞれの証言というストーリーに、なんだか惹かれたんです。 読み始めてみると、登場人物たちの複雑な感情や関係性が丁寧に描かれていて、それはよかったのですが、正直なところ、ミステリーの部分では少し物足りなさを感じてしまいました。謎解きに向けてのテンポが、私好みの速さではなかったのかもしれません。 ただ、若い世代の心情描写は細やかで、それぞれの登場人物に愛おしさを感じさせるところは作者の工夫が伝わります。パート仕事の合間に読むには、ちょうどいい分量の文庫版も助かりました。 結局のところ、話題になっているだけあって、読んで損はないというレベルでしょうか。もう少し意外性があれば、もっと引き込まれたかなと思います。ミステリーと純愛の融合という試み自体は悪くないんですけれど。
久しぶりに湊かなえの作品に手を取ってみました。高層マンションを舞台にした死の謎と、若き登場人物たちが秘める「N」への想いが絡み合う、という構成は興味深い。ミステリーの枠組みと純愛小説の要素をどう融合させるのか、そこに期待を寄せて読み進めました。 ただ、読み終えてみるとどちらの要素も中途半端だった印象は否めません。謎解きの部分は基本的なパズルのようで、複数の視点から語られる証言が予想通りの方向に収束していく流れ。純愛という要素も、切実さより甘さが先立ってしまい、そこまで心に届くものはありませんでした。 フリーランスという身分で、時間をかけて深く考察しながら読むタイプの私にとって、もう少し読み手の想像力をくすぐるような仕掛けや、予想外の展開があれば、評価も変わったと思います。決して悪くはない作品ですが、わざわざ手に取る必須の一冊かと言われると、躊躇してしまいます。
話題になっていたので手に取ってみたのですが、予想以上に引き込まれました。超高層マンションの一室での変死事件を軸に、20代の4人の証言から浮かび上がる真実——その構成の見事さに、最後までページをめくる手が止まりませんでした。 各登場人物がそれぞれ「N」という存在に想いを寄せているという設定が秀逸です。事件の真相を追いながら、同時に彼らの心情の複雑さに引き込まれていく。ミステリーとしての謎解きの快感と、純愛という切実な人間ドラマがうまく交錯している。会社員生活で疲弊した心に、こういう繊細で魅力的なストーリーはしみ込みます。 著者初の純愛ミステリーということでしたが、その新機軸がきちんと功を奏している。謎解きの爽快感と、登場人物たちへの深い共感が両立しているのは珍しい。これまでの著作も読んでみたくなりました。今年読んだ中でも間違いなく上位の傑作です。
ミステリーとしてのトリックの完成度より、登場人物たちの心情描写に重きを置いた作品だという印象です。超高層マンションという限定された舞台で、4人の証言が徐々に明らかになっていく構成は確かに引き込まれます。ただ、エンジニアとして「論理的な謎解き」を期待していた身としては、やや心理描写に寄りすぎている気がしました。 「Nとは誰か」という問いに向かって物語が進むのですが、そこに至るまでの道筋が、ときどき曖昧に感じられました。登場人物それぞれの動機や感情は丁寧に描かれているのに、事件の核となる部分の説得力がもう少し欲しかったというか。読み終わった後、腑に落ちきらない部分が残りました。 「純愛ミステリー」という触れ込みなので、恋愛要素を楽しむ読者には響く作品かもしれません。ただ実際に読んでみると、切なさと謎解きのバランスが、人によっては取りづらい可能性があると感じます。ミステリーが好きな方とロマンティックな描写が好きな方では、評価が分かれそうな一冊です。