時の家
講談社 | 2025/10/23
みんなの感想
芥川賞受賞という触れ込みに加えて、いしいしんじ氏の推薦文に惹かれて手に取った一冊。率直に言って、期待以上の完成度でした。 一軒の家を舞台に、三代の住人たちの時間が編み込まれていく構造。最初は戸惑いを感じるかもしれません。時系列が錯綜し、登場人物たちの声が重なり合うからです。しかし読み進むにつれて、その複雑さが実は綿密な設計だったことに気づく。まるで古い家屋の梁や柱に刻まれた傷や痕跡が、それぞれの時代の物語を語っているように。 フリーランスとして生きていると、移動が多く、定住の感覚が薄れることがあります。だからこそ、建物と人生の関係を丁寧に描いた本作に深く響きました。語られない想いや、物質に宿る記憶—こうしたテーマは、年を重ねるごとに心に沁みるものだと感じます。 慎重に本を選ぶ私ですが、この作品は確実な傑作。受賞作というステータスに甘えない、真摯な文学力を感じられます。
芥川賞受賞作ということで、かなり慎重に読み始めました。正直、難しい文体かもしれないという予想もあったのですが、いい意味で裏切られました。 一軒の家を舞台に、三代の住人たちの人生が静かに浮かび上がってくる構成が本当に巧妙です。建物という物質を通して人間の感情や時間の流れを描くという発想自体が新鮮で、ページをめくるたびに「この家に確かに人々がいたんだな」という実感が深まっていきます。 会社員として日々の雑事に追われている身として、この本が丁寧に描く一つひとつの家族の営みや想い、そして語られないままの後悔や愛情に、何度も立ち止まりながら読みました。决して派手ではない物語なのに、心に残る力強さがあります。 推薦者たちが褒める「繊細さ」というのは本当で、文章の端々に著者の細やかな観察眼が感じられました。少し読むのに時間がかかるかもしれませんが、その価値は十分にあります。大事に読むべき一冊だと思います。
芥川賞を受賞した作品ということで、つい手に取ってしまいました。正直なところ、現代の難しい小説は敬遠していたのですが、この本は違いました。 一軒の家を通して、そこに暮らした三代の人々の思いや記憶が浮かび上がってくる。物や建物がこんなにも温かく、人間らしく感じられるなんて。登場人物たちの「語られなかった想い」が、まるで家自体が語りかけてくるようで、読んでいて不思議な心地よさがありました。 パートで疲れて帰った日も、ついつい続きが気になって読み進めてしまう。難しいと思い込んでいた芥川賞作品が、こんなに素敵に感じられるなんて。年をとると、こういう「ふんわりとした優しさ」の物語がいいですね。何度も読み返したくなる一冊です。
芥川賞受賞作とのことで、慎重に評判を調べてから購入した一冊です。建築文学という聞き慣れないジャンルでしたが、いしいしんじ氏の推薦文に心を惹かれました。 読み進めていくと、確かにこれは独特な作品だと感じます。一軒の家を主人公のように、そこに暮らした三代の住人たちの時間が静かに積み重なっていく様が、非常に丁寧に描かれています。物質としての「家」が、単なる舞台ではなく、そこに刻まれた人間の感情や記憶を映し出す鏡のような役割を果たすんです。 フリーランスとして自分の仕事場兼住まいを大切にしている立場からすると、空間と人間関係の繊細な描き方が胸に響きました。語られない想いや、時の流れのすきまから見える人生の輪郭——そうした見えない部分を丁寧に言葉にしようとする著者の努力が伝わってきます。 完成度の高さは確かですが、やや内省的で、読み手によって感じ方が大きく異なる作品かもしれません。それでも、じっくり読む価値のある素敵な小説だと思います。
芥川賞受賞作ということで興味を持って手に取ったんですが、予想以上に引き込まれてしまいました。一軒の家を舞台に、そこに暮らした三代の住人たちの時間が層状に積み重なっていく構成が本当に巧妙です。 家という物質が単なる背景ではなく、登場人物たちの想いや記憶を静かに抱き続けるという設定が素敵で、読むたびに「建築文学」という帯の言葉の意味が染み込んでくる感じがしました。派手な物語展開ではないけれど、その静けさの中から、語られなかった想い、時間に埋もれた人間関係が浮かび上がってくる。 家事の合間に少しずつ読み進めたのが正解だった気がします。急かされることなく、各章で立ち止まって、その時代の暮らしぶりや登場人物の心情を噛み締められたから。難しすぎず、でもしっかりとした文学性を感じさせてくれる作品です。万人向けではないかもしれませんが、人生経験が増えるほど味わい深く読める本だと思いました。
芥川賞受賞作ということで手に取ってみたんですけど、予想以上に引き込まれました。一軒の家を舞台に、三代の住人たちの人生が層のように積み重なっていく構成がすごく上手いんです。 建物そのものが記憶を持つ存在として描かれているのが印象的。壁や窓、階段といった空間が、そこに生きた人たちの想いや時間を静かに抱き込んでいく様子が、まるで呼吸しているみたいに感じられます。推薦文にもあった「物質が語る」というのは本当その通りで、モノを通して語られない感情や後悔が浮かび上がってくる。 ちょっと回想シーンが多くて、最初は時系列を整理するのに手間取りましたが、読み進むうちにそれが作品の狙いなんだなって理解できます。完成度が高いというのも納得。特に終盤の仕掛けは、これまでの積み重ねが一気に意味を持つ感じで素敵でした。 気軽に読むというより、じっくり向き合う必要がある本ですけど、そういう読書も好きな人なら絶対おすすめです。
芥川賞受賞作ということで期待して手に取りました。いやあ、この本、本当に素敵です。 一軒の家を舞台に、三代の住人たちの時間が重なり合っていく構成なんですが、読んでいて不思議な心地よさを感じました。家という物質的な存在を通じて、人間の感情や記憶がこんなにも繊細に、切実に伝わってくるなんて。普段ビジネス書ばかり読んでいる私にとって、こういう言葉の使い方や表現の豊かさは本当に刺激になります。 仕事で疲れた日に、この本を読むと自分の中に静寂が生まれるというか。登場人物たちが家の中で感じていたことが、なぜか今の自分の人生に重なって見えてくるんです。時間の流れ方、大事なものの失い方、そういうテーマが自然と心に落ちてきました。 難しすぎず、でも読み応えがある。忙しい日常の中でも無理なく読み進められるのに、終わった後には何かが変わっている。そんな良質な小説って本当に貴重だと思います。
芥川賞受賞作ということで手に取ってみました。一軒の家を舞台に、そこに暮らした三代の人たちの記憶や思いが浮かび上がるという設定は、なかなか興味深いですね。 読んでいて、家という物質を通じて人間の時間が積み重なっていく様子が丁寧に描かれているなという印象です。建築文学という言葉通り、建物そのものが物語の語り手になっているような感覚がありました。 ただ正直なところ、私にはすこし難しく感じる部分も多くて。表現が洗練されているのはわかるのですが、登場人物たちの思いがぼんやりと見えるような書き方で、時々何が起きているのか掴みにくくなってしまいました。若い頃なら違ったかもしれません。 話題の作品だし、せっかく芥川賞の受賞作を読もうという気になったのですから、じっくり向き合って良かったと思います。ただ私のような気軽に読みたい派には、もう少し素直な物語展開だと嬉しかったかな、というのが本音です。