健太の本棚
感想

東尋坊での転落から始まるこの作品、設定は確かに惹きつけられる。パラレルワールド的な世界観、存在しないはずの自分が生きている現実——こういう不気味さって、フリーランスとして一人で仕事してると、時々感じる違和感に近いなと思った。 ただ正直、読み進めていくと、その設定の面白さに比べて展開が少し単調に感じてしまった。主人公の迷走や葛藤は丁寧に描かれているんだけど、ミステリとしての緊張感とか、青春小説としてのときめきみたいなものが、どうも薄いというか。途中で何度か「ここからどう動く?」と期待して読んだんだが、想像の範囲内で収まってしまう感じ。 青春ミステリの金字塔という触れ込みだったから、期待値が高かったのかもしれない。決して悪くない作品なんだけど、何か足りない——そんな印象が最後まで残った。秋の夜に文庫本をぼんやり読むには十分だが、もう一度手に取ろうとは思わないかな。

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