ゆーきの本棚
感想

久しぶりに一気読みしてしまった。警察小説というのは好きなジャンルだが、この『朱夏』はひと味違う。 妻が突然消える。その事件の捜査を担当するのが優秀な刑事・樋口だというところから始まるのだが、物語は妻の視点と夫の視点から交互に進められる。消えた妻が何を経験し、何を思っているのか。その一方で、夫である刑事はどのように真実にたどり着くのか。二つの視点で描かれるから、緊迫感が倍増する。 著者の構成の妙というか、丁寧な筆運びがいい。本格的な警察小説としての面白さもありながら、夫婦という絆の深さについても考えさせられた。定年後、妻との関係を改めて見つめ直す年代の私だからこそ、この作品の重みが心に響いた。 最近出版されたばかりということもあって、話題の中心になっているのも納得できる。八十歳でもこういう骨太な警察小説が読みたい気持ちは変わらない。文庫版もしっかりした造りで読みやすい。本当に良い一冊に出会えました。

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