一郎の本棚
世界でいちばん透きとおった物語

世界でいちばん透きとおった物語

杉井 光 新潮社 2023年4月26日

感想

出版社のレビュー欄でこの本が高く評価されているのを見かけて、慎重に情報を集めてから購入した一冊です。ミステリ作家・宮内彰吾の遺稿をめぐる物語というプロット設定だけで、すでに惹きこまれていました。 読み始めると、主人公が父親の秘密と向き合う過程がじわじわと迫ってくるような緊張感で、ページをめくる手が止まりませんでした。複雑な家族関係の中で、真実とは何かを問い続ける構成が見事です。何より、編集者・霧子さんとのやり取りを通じて、物語の奥行きが徐々に明かされていく手法が秀逸でした。 社会人になって、仕事での人間関係に疲れることもある毎日ですが、この本は「人間関係の複雑さ」をテーマにしながらも、どこか希望的な読後感を与えてくれます。衝撃のラストという触れ込みも、決して嘘ではありませんでした。個人的には、その結末の意味を噛み砕くのに少し時間がかかりましたが、だからこそ何度か読み返す価値のある作品だと感じます。 新潮文庫のこれ以上ない一冊として、自信を持っておすすめできます。