てつの本棚
感想

家庭裁判所を舞台にした連続短編形式の構成が、実に気持ちよく読めました。調査官・庵原かのんが向き合う一つ一つの案件が、単なるミステリーにとどまらず、人間関係の複雑さや心理の深さを丁寧に描き出しています。 教員という仕事柄、生徒や保護者の隠れた事情や本当の気持ちを知る機会が多いのですが、この小説を読んでいると改めて「人の心の内は本当に見えないものだ」と感じさせられます。表面に見える問題の背後にある、切実で切ない理由たちが次々と明かされていく過程は、とても人間らしくて好きです。 庵原という主人公のキャラクターも素晴らしい。プロフェッショナルながら、相談者たちの気持ちに寄り添う姿勢が自然で、読んでいて信頼感が持てます。短編集ながら、各編がしっかり着地しているので、どの話から読んでもぐいぐい引き込まれます。前作同様、後味のいい話と考えさせられる話のバランスも絶妙。週末に少しずつ読み進める、そんな楽しみ方ができる一冊です。