てつの本棚
明日、あたらしい歌をうたう

明日、あたらしい歌をうたう

角田光代 水鈴社 2026年2月26日

感想

200ページという短さに驚きました。通勤電車で数日で読み切ってしまいましたが、その濃密さと心地よさは、長編を読み終わった時のような充足感がありました。 新とくすかという二人の人物を軸に、音楽を通じて描かれる親子の絆と、それぞれの人生の転機。教員をしていると、生徒たちの人生に影響を与える立場について考えることが多いのですが、この本は「一曲の歌」が人の人生をどう変えるかを静かに、しかし力強く描いている。その視点がとても好きです。 隠された真実が明かされる瞬間のドキドキ感も秀逸ですし、何より最後に「あたらしい歌」へと向かっていく二人の姿勢に、思わず応援したくなってしまいました。恋愛も親子関係も、普遍的でありながら誰もが経験する深い部分に触れている。 短編だからこそ、余計な説明がなく、読者の想像力に委ねられた部分も多い。その空白を埋めるように、自分自身の人生経験が重なってくる感じが素敵でした。忙しい時期こそ、こういった優れた短編にこそ出会う価値があるなと改めて感じます。