てつの本棚
感想

5年ぶりの長編ということで、期待を込めて手に取った一冊でした。松川貢と田持猛、そして遥と万千花——二組の人間関係を軸に、時間の経過とともに変わっていく関係性が丹寧に描かれています。 特に印象的だったのは、SNSを通じたゆるやかな繋がりという現代的なモチーフです。かつて仰ぎ見ていた相手と、いつの間にか立場が逆転している——そういった不思議な距離感が、とても自然に、そして切実に伝わってきました。教員という職業柄、人間関係の変化には敏感なのですが、この作品はそこをうまくすくい取っている気がします。 バンクーバーという舞台も効果的で、海外にいる親友とのルームシェアという設定から生まれる物語の広がりも良かった。3年の執筆期間が活きているのか、ストーリーに深みと余韻があります。絶望と勇気という相反する感情が同時に立ち上がってくる場面も多く、読んでいて心が揺さぶられました。 気軽に読める作品とはいえませんが、じっくり味わう価値のある一冊。週末に時間をとって読み進める、そんな楽しみ方がぴったり合う作品だと思います。

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