怪談好きの自分としては、この『死ぬ消える終わる怪談』は大当たり。竹書房の怪談本は外れが少ないとは聞いていましたが、期待以上でした。 何が良いかといえば、単なる恐怖心を煽るだけでなく、人生の喪失感や社会的な抹殺という、現代人にとってリアルな怖さをテーマにしている点。死そのものより、存在を消されることの方が恐ろしいというコンセプトは、教員として人間関係を扱う身としても心に響きます。 13編の短編ですが、どれも独立して完結していながら、底流に流れる「報い」という共通のテーマが一つの世界観を作り出している。「忘れ物を取りに」の兄弟の話や、犬を飼うと不幸になる家系の因果関係など、気になる設定が満載です。読み始めるとつい続きが気になって、夜中に一気読みしてしまいました。 短編集なので通勤時間や寝る前に気軽に読めるのも、仕事が忙しい身にはありがたい。怪談初心者にも既視感がなく、ベテランも唸らせる傑作揃いだと思います。
最近登録された他の本の感想
2026年08月18日
孤島の館で次々と起こる殺人事件、という古典ミステリーの王道設定ですね。79歳の毒舌老令嬢と少年院帰りの召使いというコンビの取り合わせは確かに新鮮で、この二人のやり取りを読むのが本書の主な楽しみどころだと感じました。 ただ、実際に読んでみると、設定の面白さに比べて物語の進み方がやや単調というか、予測できる展開が多いんです。犯人探しのプロセスも丁寧なのですが、どうしても「あ、この人かな」と早めに見当がついてしまう。謎解きの快感よりも、キャラクターの個性に支えられている印象ですね。 バンコ版ということで手軽さはありますし、電車の移動時間にさくっと読むには十分です。ミステリーの新しい傑作を期待して読むと肩透かしを食うかもしれませんが、昔懐かしいクローズドサークルものが好きな人なら時間を潰すのにちょうどいい一冊。シリーズものらしいので、続きが気になるという人もいるでしょう。個人的には、まあこんなものかな、といった感じです。
2026年08月11日
教員をやっていると、生徒の進路指導の際に時事問題の質問をされることが本当に増えました。自分も最新の時事用語をしっかり把握しておきたいと思い、この本を手にしてみたんです。 正直なところ、期待以上でした。ニュースの概要だけでなく、その背景にある論点まできちんと解説されているので、単なる知識の詰め込みではなく、物事を多角的に理解できるようになります。試験や面接対策という目的だけでなく、一般教養を深めるという点でも非常に有用です。 構成も読みやすく工夫されていて、忙しい毎日の中でも気軽に読み進められるのがいい。生徒への指導の際に「こういう背景があるんだよ」と説明できるようになったので、授業の質も向上した気がします。進路指導に関わる教員にはもちろん、時事問題に対する理解をアップデートしたい大人にも、こちらの本は強くお勧めできます。
2026年08月06日
経済関連の本はついつい難しく感じてしまうのですが、この本は驚くほど読みやすかった。日本経済の現状と可能性について、複雑な理論を分かりやすく説明してくれているのが素晴らしい。著者の視点が新鮮で、一般的な悲観論とは異なるポジティブなアプローチが心に響きました。 教員という仕事をしていると、生徒たちの将来について考える機会が多いのですが、この本を読んで日本経済の実力を改めて認識できました。数字だけでなく、その背景にある論理がしっかり構築されているので、説得力があります。 何より嬉しかったのは、難しい内容なのに最後まで飽きずに読み進められたこと。ビジネス書としての実用性と読みやすさのバランスが絶妙です。経済に詳しくない人こそ読んでみる価値がある一冊だと思います。気軽に読める良質なビジネス書を探している人には、強くお勧めしたいですね。
2026年07月24日
教員生活も長くなると、職場の同僚たちから子育ての話を聞く機会が増えます。特に保育園の病欠ルールについては、働く親からよく悩みを聞かされていました。「37.5度の壁」という表現に思わず苦笑いしてしまいました。 この本は、そんな現代の保育園事情を舞台にしたエッセイ小説といった趣です。主人公の保育士が、小児科医の園長がいる「あんしん保育園」という理想的な保育園で経験する日々が綴られています。ICカード連動の電子連絡帳やボディカメラを使った安全管理など、最新のテクノロジーと医学的知見が融合した保育現場の描写は興味深い。 何より良かったのは、現場の保育士と保護者の両視点から、保育園という場所を温かく描いているところです。子育ての大変さを理解しながらも、前向きなトーンで話が進んでいくので、読んでいて気持ちが良い。教育現場にいる身として、他の現場で工夫されていることを学べるのも収穫でした。完全な解決策ではなく、「こんな試みもあるんだ」という発見の連続。気軽に楽しめて、考えさせられる一冊です。
2026年07月11日
宮本輝の作品を久しぶりに読みました。教員生活も長くなると、人生の重みを感じる物語に惹かれるようになるんですね。 この小説は、九十歳の祝いに開かれる晩餐会を軸に、祖母・徳子の人生が丁寧に紐解かれていきます。戦時下での結婚、夫の死、その後の選択——歴史の波に翻弄されながらも、なぜ今この時に光輝く晩餐会を開くのか。その答えを探る過程で、一人の女性がどのように人生を歩み、どのような思いで家族を見守ってきたのかが見えてくる。 特に印象的なのは、祖母が「よき時」をどう捉えているかという視点です。失われた過去ではなく、今この瞬間、そして未来への希望——その転換が、家族との関係性をも変えていく。授業で人生観について話す機会が多い身として、この物語の中にある「いのちの肯定」みたいなメッセージが胸に響きました。 美しい食卓描写も相まって、読み終わった後に家族との時間を大切にしたくなる。そういった温かさを持った感動作です。
2026年07月05日
投資というと難しいイメージを持つ人も多いと思いますが、このマンガ版はそうした先入観を見事に払拭してくれます。個人資産900億円を築いた伝説のサラリーマン投資家・清原達郎の人生と投資哲学が、わかりやすくエンタメとして描かれているのが魅力です。 元々の著書は投資初心者には難しい部分があるとのことですが、漫画化によってそうした複雑さが取り払われ、純粋にストーリーとして楽しめるようになっているのは良い工夫だと感じました。野村證券からヘッジファンドへと進む人生ドラマも興味深く、単なる投資ハウツーではなく、人間ドラマとしての側面も感じられます。 教えという仕事をしていると、複雑な事柄をいかにわかりやすく伝えるかが大切だと常々思うのですが、このマンガはその点で優れた事例だと思います。気軽に読めるマンガの形式だからこそ、投資について新たな視点を得られるのではないでしょうか。続編も気になります。
2026年07月05日
『モロッコ水晶の謎』は、講談社の国名シリーズらしく、異国情緒あふれる舞台設定がまず魅力的ですね。火村英生シリーズということで、複雑な事件の謎解きをどう進めるのか期待していたのですが、その期待をしっかり満たしてくれました。 「助教授の身代金」と「ABCキラー」の二編が収録されていますが、どちらも緻密な構成が光っています。特に後者は連続ドラマ化されているだけあって、読みやすさと推理の奥深さが両立しているところが秀逸。教員という職業柄、事件の論理的解法に思わず惹き込まれてしまいました。 一つ挙げるとすれば、モロッコという舞台をもっと活かした描写があればさらに良かったかなという気もしますが、これは贅沢な望みかもしれません。気軽に読める推理小説としても、しっかりした謎解きを求める方にも、どちらにも応えられる一冊だと思います。国名シリーズの他の作品も読んでみたくなりました。
2026年07月05日
同僚の女性教員が勧めてくれた作品で、正直なところ手にとるまで躊躇していたんです。でもいざ読み始めると、その溺愛っぷりの心地よさにすっかり引き込まれてしまいました。 年の差カップルが織りなすあたたかなやりとりが、疲れた日々の中での癒しになるんですよね。大学に進学した主人公が次々と巻き込まれるトラブルに、相棒の旦那様がどう対応するか──その関係性が本当に微笑ましい。教育現場にいると、つい生徒たちの成長ばかりに目が向きがちですが、大人の世界の温かさを思い出させてくれました。 第6弾ということで、キャラクターたちの息遣いがしっかり定着している安定感もあります。芸能界というちょっと予想外の展開も、予定調和に陥らない工夫が感じられて良かった。気軽に読める一冊でありながら、心がほっこりする─そういう作品が40歳になると本当に貴重です。週末の息抜きに、また手に取りたくなる作品です。
2026年06月29日
日本推理作家協会賞受賞作ということで期待を込めて手にしたのですが、正直なところ、六編を通して読んでもやや物足りなさが残ってしまいました。 島という限定的な舞台設定と、そこから離れられない人間関係という題材は確かに興味深いです。各短編も丁寧に構成されていて、推理小説としての仕掛けもあるのでしょう。ただ、教室で生徒たちの心情を読み取るのに慣れた身としては、登場人物たちの心の揺らぎや葛藤の描き方が、やや表面的に感じてしまうんです。 「望郷」というテーマは、その重さと複雑さが興味深いものの、各編で繰り返されるパターンに少し疲れが出てきてしまいました。選考委員が高く評価した「海の星」も、確かに仕掛けの巧さはありますが、それが物語全体の深さに結びついているかというと、疑問が残ります。 風情のある短編集としては読みやすいのですが、受賞作としての説得力という点では、個人的には合いませんでした。もう少し心理描写の奥行きを期待していただけに、残念です。
2026年06月27日
シッド・ハレーシリーズを愛読している身としては、この第3弾はもう待ちきれないほど期待していました。前作までのキャラクターの成長を追いながら読み進めると、今回のテーマはより深く、より複雑になっていることに気づかされます。 失った左手を取り戻したことで生まれる心理的葛藤と、それが夫婦関係にもたらす影響——こうした人間ドラマの部分が実に丁寧に描かれています。単なる冒険活劇ではなく、キャラクターの内面に向き合う姿勢がこのシリーズの魅力なんだと改めて感じました。 そして競馬界の問題に立ち向かう展開も秀逸。ルールの隙を突く敵との緊迫した対立構図は、教科書では教えられない現実世界の複雑さを見事に映し出しています。ページをめくる手が止まりませんでした。 文庫本というお手頃なサイズも嬉しい。移動時間や休み時間に気軽に読み進められる点も、忙しい日常の中での楽しみとしてはぴったりです。ファン必読というのは伊達ではありませんね。
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