はるかの本棚
イン・ザ・メガチャーチ

イン・ザ・メガチャーチ

朝井リョウ 日経BP 日本経済新聞出版 2025年9月3日

感想

現代社会の不可視の構造を見事に可視化した傑作です。 管理職として組織を動かす立場にいると、いかに「物語」が人間の行動原理を左右するか日々実感しています。この作品は、その仕組みをアイドルファンダムという身近な題材を通じて鮮明に描いています。 三つの異なる視点から同じ現象を眺めることで、運営側のシステマティックな手法、消費者側の心理的投影、そして批評的距離の難しさが複層的に浮かび上がります。特に、生きる実感を求める人々がいかにして「物語」に救いを求め、そしてときに傷つくのかという描写は、深い共感と考察をもたらしました。 沈みゆく列島での「界隈」の繁栄というテーマ設定も秀逸です。現代人の孤立と承認欲求、コミュニティの形成と崩壊のサイクルが、冷徹でありながらも温かい視点で描かれています。 話題作として当然チェックしていましたが、予想をはるかに超える質の高さでした。管理職として組織論を学ぶ観点からも、一人の人間として現代社会を理解する観点からも、非常に価値のある一冊です。同年代の方にぜひお勧めしたい作品。