frottage:あの子が残したこわい話

frottage:あの子が残したこわい話

多故くらら

出版社:竹書房 出版年月日:2026/02/28

竹書房 | 2026/02/28

4.67
本棚登録:3人

みんなの感想

話題の怪談本ということで手に取ってみたんですが、これは本当に良い意味で期待を裏切られました。 多故くらら氏の初単著ということで、どんな作品なのか興味津々だったんですけど、読んでみると単なる怪談集じゃないんですよね。各編で語られる怪の話は、取材を通じて集められたもの。でも重要なのはそこじゃなくて、体験者の心の奥底にある孤独や痛みまで丁寧に掘り下げられている点です。 怪という存在を通じて、人間の深い部分を浮き彫りにしていく手法が秀逸。「双子を飼う」や「フロッタージュ」といった短編は、読み終わった後も頭から離れません。ほんの少し後悔するような、でも魔力的な余韻が残る感じ。 新社会人として、仕事の合間に現代小説をいろいろ読んでますが、この本の「心理描写の深さ」と「怪談としての恐怖」のバランスは本当に優れていると思います。トレンドを押さえつつ、内実もしっかりしてる。新しい才能の登場を感じさせる一冊ですね。

怪談というジャンルに、こんな深さと優しさがあるんだと気づかせてくれた一冊です。 多故くらら氏の『frottage』は、単なる恐怖を味わわせる怪談ではなく、人間の心の奥底にある孤独や哀しみに向き合う作品。教室で日々、生徒たちの表情を見ている身としては、「双子を飼う」や「黒いダイヤの拳」に出てくる、言葉にならない心情がじわじわと伝わってきました。 特に印象的だったのは、昭和から現代へと時代を跨いで描かれた怪たちが、決して説教的ではなく、ただ存在しているという描き方。読み終わった後、不気味さが消えずに心に残る感覚は、著者が「毒のような余韻」と表現した通り。後悔しながらも、もう一度読み返したくなる魅力があります。 忙しい日常の中で、ふと立ち止まり、人間の根源的な何かに触れたいときにぴったりです。怪談好きはもちろん、人間関係や心理に興味のある方にもお勧めできる、珠玉の短編集だと思います。