てつの本棚
frottage:あの子が残したこわい話

frottage:あの子が残したこわい話

多故くらら 竹書房 2026年2月28日

怪談というジャンルに、こんな深さと優しさがあるんだと気づかせてくれた一冊です。 多故くらら氏の『frottage』は、単なる恐怖を味わわせる怪談ではなく、人間の心の奥底にある孤独や哀しみに向き合う作品。教室で日々、生徒たちの表情を見ている身としては、「双子を飼う」や「黒いダイヤの拳」に出てくる、言葉にならない心情がじわじわと伝わってきました。 特に印象的だったのは、昭和から現代へと時代を跨いで描かれた怪たちが、決して説教的ではなく、ただ存在しているという描き方。読み終わった後、不気味さが消えずに心に残る感覚は、著者が「毒のような余韻」と表現した通り。後悔しながらも、もう一度読み返したくなる魅力があります。 忙しい日常の中で、ふと立ち止まり、人間の根源的な何かに触れたいときにぴったりです。怪談好きはもちろん、人間関係や心理に興味のある方にもお勧めできる、珠玉の短編集だと思います。