三浦の本棚
これからの「正義」の話をしよう

これからの「正義」の話をしよう

マイケル・J.サンデル / 鬼澤忍 早川書房 2010年5月1日

感想

金融危機や経済格差といった現代の社会問題に、実は深い哲学的背景があるという視点が素晴らしい。著者は古典から現代まで、多くの哲学者の思想を分かりやすく解説してくれます。 会社員として日々の業務の中で、利益追求と社会貢献のバランスについて悩むことがあります。本書を読むと、そうした迷いや葛藤は歴史的には何度も繰り返されてきた問題だと気づかされます。アリストテレスからロールズまで、それぞれ異なるアプローチで「正義」に向き合ってきたのです。 特に良かったのは、複数の視点を同等に紹介しながらも、読み手が自分自身で考える余地を残している点です。著者が一方的に答えを提示するのではなく、問題提起に徹しているので、考えるプロセスそのものが価値あるものに感じられました。 ただし、哲学書としては相当に読みやすいとはいえ、初心者には少し難しいかもしれません。基本的な倫理学の知識があると、より深く理解できるでしょう。それでも、現代の諸問題を哲学的に考え直したい大人にはぜひ手にとってほしい一冊です。