斎藤の本棚
マチネの終わりに

マチネの終わりに

平野 啓一郎 文藝春秋 2019年6月6日

感想

話題になっていた平野啓一郎の「マチネの終わりに」、文庫化されたタイミングで読んでみました。天才ギタリストと国際ジャーナリストという相手を異にした二人が、人生の転機で出会うという設定は確かに魅力的です。 四十代という人生の時期を舞台に、愛と芸術、人生の選択について問いかける構成は興味深いものでした。特に、たった三度の出会いでこれほど深い愛が生まれるというテーマには惹かれます。 ただ、読み進めていると、その恋愛ストーリーが予想の範囲内に収まってしまう感があって。もっと予想外の展開や、心を揺さぶられるような何かを期待していたのですが、最後まで読んでも「あ、やはりそうきたか」という印象が拭えませんでした。 文章は確かに美しく、丁寧に書かれています。ただ、その優雅さの中で、ストーリーとしての驚きや感動が少し埋没してしまっているような気がするんです。芥川賞を受賞した著者の力量は十分感じられますが、この作品に関しては、私とのタイミングが合わなかったのかもしれません。話題作なので、違う視点で読む方にはまた別の魅力が見えるのだろうと思います。