ちょっと角の酒屋まで

ちょっと角の酒屋まで

角田光代

出版社:オレンジページ 出版年月日:2026/02/18

オレンジページ | 2026/02/18

4.33
本棚登録:3人

みんなの感想

感想

エンジニアという職業の関係上、論理的で効率的な文章を日常的に読んでいます。だからこそ、角田光代のこのエッセイ集に出会ったときの驚きと心地よさが格別でした。 本書は「飾らない日常」を徹底的に肯定する姿勢が素晴らしい。冷蔵庫の生姜のカビ、機内持ち込み不可の食材没収、立ち飲みが苦行に感じる矛盾──こうした些細で個人的な出来事を、自分の弱さや躊躇までも含めて丁寧に綴っている。最初は「これで大丈夫だろうか」という慎重さもありましたが、読み進むうちに、この等身大の言葉遣いに引き込まれました。 特に感じたのは、著者が「完璧な人生観」や「教訓」を押し付けないという潔さです。私たちエンジニアは常に問題解決を求められる職業ですが、ここにあるのは「そういうこともある」という静かな諦観と許容。約20年の連載から選り抜かれた文章ということもあり、一編一編の完成度が高く、何度も繰り返し読みたくなります。 日常に疲れた時、背伸びではなく、そのまま座り込むような優しさが欲しい時。そんな時にそっと手に取れる一冊です。

感想

話題になってた角田光代のエッセイ集、ようやく読みました。正直、期待以上でした。 日々の食卓のこと、旅先での失敗談、生姜にカビが生えたときの不安感まで——こんなにも些細で、けれど妙に心に残る出来事ばかり。読んでいて「あ、これ、自分の生活にもある」って思わず共感してしまう瞬間が何度もありました。 何がいいって、この本には説教くささがない。自炊生活を続ける主夫として、食べることと日常について考える時間は多いんですが、角田さんのように「それでいいんだ」と軽やかに受け入れる姿勢が本当に好きです。気取らない筆致ってこういうことなんだなって。 二十年近く雑誌連載を続けてきたエッセイだから、一編一編が短くて読みやすいのも魅力。朝のコーヒーの時間や、寝る前のちょっとした時間に少しずつ読めるから、生活に溶け込みやすい。 細かい喜びや戸惑いを愛おしむ、そういう視点を改めて教えてもらった気がします。もう一度、最初から読み直したい一冊です。

感想

角田光代のエッセイ集。『オレンジページ』の連載をまとめたものだが、これが実に良い。 仕事の緊張感から解放される週末、ふと手に取るにはちょうどいい一冊だ。内容は日々の食卓や旅先での些細な出来事ばかり。冷蔵庫の生姜にカビが生えたことで不安になったり、海外の空港で食材を没収されて落ち込んだり——本当にありふれたことばかりである。 だからこそ面白い。管理職として日々、大きな決断や責任を抱えている身としては、こうした個人的で小さな物語が心に響く。角田の筆致は肩肘張らず、気取らない。読んでいて自分も同じようなことで悩んだり、くすっと笑ったりする。そういう共感の積み重ねが、読了後に不思議と気持ちを軽くしてくれる。 難しい教訓も、立派な大義名分も求めていない——著者がそう明言しているのも好きだ。人生の中盤に差しかかった今だからこそ、そんな気負わない優しさに触れたくなるのだろう。気軽に、何度も繰り返し読みたくなる一冊に仕上がっている。

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