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ちょっと角の酒屋まで

ちょっと角の酒屋まで

角田光代 オレンジページ 2026年2月18日

角田光代のエッセイ集。『オレンジページ』の連載をまとめたものだが、これが実に良い。 仕事の緊張感から解放される週末、ふと手に取るにはちょうどいい一冊だ。内容は日々の食卓や旅先での些細な出来事ばかり。冷蔵庫の生姜にカビが生えたことで不安になったり、海外の空港で食材を没収されて落ち込んだり——本当にありふれたことばかりである。 だからこそ面白い。管理職として日々、大きな決断や責任を抱えている身としては、こうした個人的で小さな物語が心に響く。角田の筆致は肩肘張らず、気取らない。読んでいて自分も同じようなことで悩んだり、くすっと笑ったりする。そういう共感の積み重ねが、読了後に不思議と気持ちを軽くしてくれる。 難しい教訓も、立派な大義名分も求めていない——著者がそう明言しているのも好きだ。人生の中盤に差しかかった今だからこそ、そんな気負わない優しさに触れたくなるのだろう。気軽に、何度も繰り返し読みたくなる一冊に仕上がっている。