雄一の本棚
感想

石原慎太郎という人物について、正直なところ複雑な感情を持っていた。しかし本書を読んで、その思想的な立場の是非は別として、戦後日本の激動期を生きた一人の人間としての魅力を改めて認識させられた。 亡くなられてから四年経ってなお、こうして本人の肉声が生き生きと蘇る形での出版は、実にうまい構成だと思う。新潮新書という気軽に読める形式で、まるで応接室に招かれたように彼の思い出話を聞かされる。戦後の政界、文壇、芸能界など、様々な分野の人物との交わりが次々と描かれていく。 特に印象的なのは、年を重ねた著者が過去を振り返る際の率直さである。時に自らの判断を問い直し、時に理由を語る。完全に同意できるわけではない部分も多いが、その思考の軌跡は十分に読む価値がある。 人生経験を積んだ同年代の読者だからこそ、この種の回想録には味わい深いものがある。決して万人向けではないだろうが、戦後日本を知りたい、あるいは石原という人間をより立体的に理解したいと考える読者にとっては、貴重な一冊だと言えよう。

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