ガリレオシリーズの最新作ということで、さっそく手に取ってみました。80年も生きていると、面白い小説との出会いは本当に貴重なんですね。 東野圭吾のこのシリーズは、科学的な謎解きと人間ドラマのバランスが絶妙で、いつも引き込まれてしまいます。「永遠の記憶」も例に漏れず、物理学の知識を巧みに活かしながら、謎めいたストーリーを展開していく。歳をとって脳が少し衰えてきた身としては、こうした知的な興奮は何よりの栄養になります。 登場人物たちの心の葛藤も丁寧に描かれていて、単なるミステリーを超えた深さがある。長編だからこそ、キャラクターに時間をかけて向き合えるのが良いですね。これまでのシリーズとのつながりも感じられ、ファンとしては満足度が高い。 商売で疲れた夜も、この本を開くと時間を忘れてしまいます。話題になるだけの価値がある、実に良い一冊です。
最近登録された他の本の感想
2026年09月03日
最近、こういう人情味あふれる小説が出ているんだなと感心させられた。 自営業をやってきた身としては、人と人とのつながりの大切さというのは、嫌というほど理解している。この本は葬儀場を舞台にしながら、そうした人間関係の本質を丁寧に描いている。漆原という主要人物のキャラクターが非常に魅力的で、毒舌ながらも遺族に真摯に向き合う姿勢に引き込まれた。 著者が夫の闘病と死別を経て五年かけて書いたという背景を知ると、一編一編の物語に重みが感じられる。単なる感動小説ではなく、死別という誰もが経験する人生の岐路について、そっと手を差し伸べるような優しさがある。スカイツリーの近くという現代の東京を舞台にしながらも、古き良き人情が息づいている点がいい。 八十になった今だからこそ、こうした作品の価値がよくわかる。無理な感動狙いではなく、自然な形で心を揺さぶられた。文庫本というのも手に取りやすくていい。
2026年08月17日
最近、テレビや新聞でウクライナの話題が絶えない。世間では政治家やコメンテーターが盛んに意見を述べているが、本書を読んで、我々がいかに見当違いなことを言っているのかに気づかされた。 著者は『動物化するポストモダン』で知られる識者だが、今回は「考えないこと」の大切さを説く。これは一見、知識人にあるまじき主張に思えるかもしれない。しかし、八十年も生きてきた身からすると、腑に落ちる部分が多い。ユーゴスラヴィアやベトナム、果ては福島原発まで、様々な事例を通じて、我々がいかに正義を振りかざしながら、実は何も解決していないのかを示す。 政治談義に明け暮れる知識人社会への冷徹な批判であり、同時に平和とは何かを根本から問い直す力作だ。この年になると、言葉の多さは誠実さではなく、むしろ逆であることをよく知るようになった。そうした実感と響き合う一冊である。話題の本として、一度は目を通しておく価値がある。
2026年08月11日
先月、孫がこの本をプレゼントしてくれたので読んでみました。話題のパンどろぼうシリーズがセットになったギフトボックスということで、孫たちの間でも人気があるようですね。 内容としては、パンを盗む泥棒が主人公という変わった設定で、その謎めいた正体が徐々に明かされていく。子どもたちも喜ぶようなストーリー展開で、イラストも親しみやすい。ただ、正直なところ、80年も生きていると、この手の児童向けの物語には新鮮さを感じにくいのが実情です。 三巻セットで楽しめるという点は良いし、メッセージカード付きというギフト仕様も考えられている。しかし、大人が読んで深く考えさせられることもなく、かといって子どもの頃のような純粋な面白さで夢中になることもない。つまり、世間で話題だから手に取ってみたというところですが、年相応の感想としては「なかなか悪くはないが、特別な印象も残らない」というのが率直なところです。孫たちへのプレゼントとしては有用でしょう。
2026年08月04日
新潮社の『プレゼント』を手にしたのは、書店で話題作をチェックしていたときのことだ。現代を代表する7人の作家が「夏」をテーマに書き下ろしたというコピーに惹かれた。 80年も生きていると、人生経験も相応だが、それでもこの本は新しい発見に満ちていた。各作家の筆致の違いが実に興味深い。同じ「夏」という季節を舞台にしながら、これほどまでに異なる世界観が生まれるのか、と感心させられる。 特に印象的だったのは、短編という形式が持つ力だ。長編を読むだけの時間や体力に不安が出てきた年代だからこそ、凝縮された物語の素晴らしさが身に沁みる。各篇ともに、何気ない日常から人生の真理へとする導き方が実に秀逸である。 「人生を大きく変えるかもしれない」という帯の言葉も決して大げさではない。人生経験が長いからこそ、この本で語られる「切なさ」や「怖さ」「美しさ」の意味がより深く理解できるような気がした。まさに、小説好きへのプレゼントたる一冊だ。
2026年07月27日
孫の勧めで『イタズラなKiss』を読み始めたのだが、この10巻まで来ると、もうすっかり登場人物たちの人生に引き込まれてしまった。直樹の嫉妬する場面では、思わず苦笑いしてしまった。若い頃は自分だってこんな気持ちを抱いたものだ。 琴子の看護師志望という道筋も話題性があって、今の世の中の動きに沿った内容だなと感じる。人気漫画らしく、恋愛とキャリアの両立という現代的なテーマをバランスよく描いている。文庫本という手軽さもあって、仕事の合間に少しずつ進められるのがいい。 80年も生きていると、こうした青春ものを読んでも懐かしさと新鮮さが混じるもので、それが魅力だ。次巻がどうなるのか、つい気になってしまう。自営業の傍ら、こういった話題作をチェックすることが最近の楽しみになっている。
2026年07月07日
ハーンの著作は若い頃から愛読しているが、この新編は本当に素晴らしい。新訳ということで最初は少し心配だったが、むしろ現代人にも読みやすくなっており、かつ詩情を失っていない。八十年も生きていると、ハーンが百三十年以上前に感じた日本への驚嘆と敬愛がいっそう身にしみてわかるようになった。 松江の風景、出雲大社での厳粛な体験、日本人の微笑の謎まで、彼が西洋人の目で捉えた我々の国の本質的な美しさは今も色褪せていない。むしろ、高度成長とその後の変化を経験した私たちだからこそ、ハーンが拾い集めた日本の面影の貴さが深く感じられる。 昨今いろいろな新刊をチェックしているが、この古典の新しい装いは、人生の最後の時間を味わい深く過ごすのに最適だ。ゆっくり、繰り返し読む価値のある一冊である。
2026年07月02日
直木賞を受賞した作品だと聞いてすぐに手に取った。この歳になると、話題の良い本を見逃したくないという思いが強いものだ。 物語の構成が実に巧みだ。結婚という終点から始まり、アルバムをめくるように過去へ遡っていく。親子という関係の中に秘められた複雑な感情が、一層ずつ明かされていく。著者の筆力の凄さは、そうした禁忌的なテーマを描きながらも、どこか優雅さを失わない点にある。登場人物たちの心の空白感、愛に飢えた姿が、じっしに迫ってくる。 長く人生を歩んできた身としては、人間関係の難しさ、愛の形の多様さについて改めて考えさせられた。文庫本という手軽さも良い。何度も読み返すことになりそうだ。この作品、同じ世代の人間にも、若い世代にも読んでもらいたい。人生とは何か、愛とは何かを問い直すきっかけになるだろう。確かな評価は伊達ではない。
2026年07月01日
最近、本屋大賞のランキングで目に留まった作品です。クイズ番組を題材にしたエンターテインメント小説というのが、なかなか面白そうだと手に取ってみました。 読み始めてすぐに引き込まれました。主人公とライバルの対戦という単純な構図なのに、その謎解きの仕掛けが実に巧妙。問題文が読まれる前に正答するという状況設定だけで、こんなにも物語が広がるものかと感心します。推理作家協会賞を受賞したというのも納得できる、綿密で計算された構成です。 自営業時代、長く人間関係の機微や相手の心理を読むことが大事でしたから、登場人物たちの思惑が絡み合う様子が非常に興味深い。文庫化に際して短編が追加されているのも得した気分で、二度楽しめます。 ただ、物語の急展開する部分で、もう少し丁寧な説明があればより理解しやすかったかなという思いもあります。それでも十分に上質なエンターテインメント作品として完成度が高く、話題になるだけの理由が理解できました。
2026年06月30日
最近の文芸誌でも話題になっていたので、手にとってみた。中央公論新社の文庫という点も、ちょうどいい。 この作品は実に不思議だ。一見すると奇想天外な設定が並んでいるが、読み進めるうちにそれらが緻密に編み上げられた迷宮のようなものだと気づく。時計塔のある街を舞台に、死や喪失、そして人間のあり方が静かに問い直されている。 息子を亡くした母の悲しみ、鞄職人が心臓を採寸するという詩的で妖しい情景——こうした一見ばらばらな物語が、実は深いところで繋がっている。連作短篇という形式も巧みで、全体を通して読むと、その構築の妙に舌を巻く思いがする。 長く自営業をしてきたからか、人間関係の機微や心理の奥底にあるものに惹かれる。この著者の清冽な筆致は、そうした複雑な感情を見事に言葉にしている。若い頃とは違う視点で読む小説の面白さを改めて感じさせてくれた一冊だ。
2026年06月28日
久しぶりに江戸川乱歩を手に取った。今どきの話題の本もいいが、やはりこうした古典の傑作は何度読んでも色褪せないものだ。 「黒蜥蜴」はかねてから気になっていた作品だったが、この文庫版で改めて読み返してみると、実に見事な構成だ。美しき女賊と名探偵明智小五郎の対峙という、歴史的な舞台設定の中で、犯罪者と探偵が単なる敵対関係ではなく、何か微妙で複雑な感情が流れ始める。その心理描写の巧みさに、思わず唸ってしまった。 乱歩の筆致は相変わらず洗練されており、登場人物たちの思惑が絡み合う様が実に興味深い。商売人として長年やってきた身には、登場人物たちの綿密な計算と戦略に、現実の駆け引きとの共通点も感じられて興味深かった。 これからもこうした古い傑作を折に触れて読んでいきたいと思う。現代の流行も大事だが、時代を超えた面白さというものを忘れてはいけないと改めて感じさせてくれた一冊だ。
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