平和と愚かさ

平和と愚かさ

東浩紀

出版社:ゲンロン 出版年月日:2025/12/18

ゲンロン | 2025/12/18

5.00
本棚登録:2人

みんなの感想

感想

最近、テレビや新聞でウクライナの話題が絶えない。世間では政治家やコメンテーターが盛んに意見を述べているが、本書を読んで、我々がいかに見当違いなことを言っているのかに気づかされた。 著者は『動物化するポストモダン』で知られる識者だが、今回は「考えないこと」の大切さを説く。これは一見、知識人にあるまじき主張に思えるかもしれない。しかし、八十年も生きてきた身からすると、腑に落ちる部分が多い。ユーゴスラヴィアやベトナム、果ては福島原発まで、様々な事例を通じて、我々がいかに正義を振りかざしながら、実は何も解決していないのかを示す。 政治談義に明け暮れる知識人社会への冷徹な批判であり、同時に平和とは何かを根本から問い直す力作だ。この年になると、言葉の多さは誠実さではなく、むしろ逆であることをよく知るようになった。そうした実感と響き合う一冊である。話題の本として、一度は目を通しておく価値がある。

感想

話題になっていたこの書を手に取ったのは、管理職という立場で日々「判断」や「意見」を求められる自分の思考方法に疑問を感じたからです。著者の「ぼくたちは政治について語りすぎている」という冒頭の問いかけは、まさに現代社会への鋭い指摘。 特に印象的だったのは、平和を論じるために私たちがいかに固定的な立場を取り、対立を深掘りしているかという分析です。ウクライナやベトナム、中国といった具体的な事例を通じて、歴史修正主義や記憶の問題へと論を進める論理の厳密さに引き込まれました。 組織内での意思決定場面を想起しながら読むと、この本の主張がいかに実践的か痛感します。「考えないこと」という一見逆説的なタイトルながら、実は最も思慮深い思考方法への招待状なのだと気付きました。現在の国際情勢を理解したいと考える大人にこそ必要な一冊です。

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