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私のフランス手帖

私のフランス手帖

長森光代 彩流社 1995年5月20日

感想

フランスに関する著述は世に多いが、本書に惹かれたのは十年の滞仏体験という点だった。長期滞在者ならではの深い洞察を期待していたのである。 しかし実際に読み進めると、期待と現実のギャップを感じずにはいられなかった。エッセイ集という形式のせいか、個々の断片的な記述が断定的で、著者の一方的な視点から綴られた旅の記録に過ぎないという印象が拭えない。フランス文化への熱い想いは伝わるものの、十年という時間をかけて得られた思考の深さや、異文化理解への誠実な問い直しといったものが不足しているように感じられた。 自営業の身で多くの国を歩んできた経験から言えば、真の旅の価値は、その地で直面した矛盾や違和感とどう向き合うかにある。本書にはそうした緊張感が欠けているのが残念だ。フランス愛好家には価値のあるエッセイかもしれないが、旅と思想の関係を深く探る読者には物足りなく映るだろう。

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