莉子の本棚
そして誰もいなくなった〔改訳新版〕

そして誰もいなくなった〔改訳新版〕

アガサ・クリスティー / 青木 久惠 早川書房 2026年3月2日

感想

このミステリー小説は、何度も耳にしていた名作だったので、改訳版が出たのを機に読んでみました。 孤島に集められた十人が、童謡の歌詞に従って消えていくという設定は確かに独創的です。序盤の緊張感は見事で、一気に引き込まれました。ただ読み進めていくと、どうしても古い作品特有の描写や論理展開が目立つようになり、現代の私たちが読むには少し距離を感じてしまいます。 改訳とのことですが、それでも翻訳特有の引っかかりがところどころありました。もっとも、この物語がミステリ史上の傑作と呼ばれる理由は理解できます。構成の工夫は見事ですし、最後まで犯人が誰かという緊張感は保たれています。 ただ、現在の基準で評価すれば、心理描写がやや単調に感じられたり、登場人物たちの動きに納得しがたい部分もありました。文庫本としてのお手頃な価格と、歴史的な価値は認めつつも、新しいカバーの工夫も含め、懐かしい傑作を改めて手にするなら、このような新装版は良い選択肢だと思います。

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