最近になって「死」について考える機会が増えてきた。そんな時期にこの本に出会えたのは、なかなかいい巡り合わせだったと思う。 生物学者の視点から、死がなぜ必然なのかを丁寧に説いた本書は、難しい科学の話なのに、思いのほかサラッと読める。新書というフォーマットもあってか、気軽に手に取れるし、ページもそこまで重くない。年を重ねてきた身としては、老化への漠然とした不安や恐怖が、実は生物としての自然なプロセスなんだということが腑に落ちるのが良い。 「死は悪いものではなく、種の繁栄のために必要な仕組みなのだ」という著者の主張は、正直、最初は受け入れがたかった。だけど読み進むうちに、それもまた一つの真理なのかもしれないと感じさせてくれる。難しい医学用語も出てくるけれど、決して小難しくなく、むしろ人生の後半戦を生きる者にとって必要な視点をくれた。死を知ることで、今をもっと大切にしようという気持ちになった。
最近登録された他の本の感想
2026年08月16日
定年を控えた今だからこそ、この本に心が動きました。肺がんという重い診断を受けた著者が、その後の人生をどう生きるかを淡々と綴っています。 驚いたのは、悲観的でもなく、無理に前向きなわけでもない、その バランス感覚です。病院選び、医師選び、治療法の選択——人生の大事な局面で、自分で納得のいく決断をしていく過程が印象的でした。自分も仕事や健康のことで迷うことが多いので、「自分が頷ける道を行く」という姿勢は参考になります。 エッセイのような読みやすさで、気軽に手にとれるのもいい。重いテーマですが、重くなりすぎていない。加齢や病気と向き合うことを「明るい覚悟」と言う著者の視点は、これからの人生を考える上で大切な示唆をくれます。同じような不安を抱える人にはもちろん、まだ元気な人にも一度は読んでほしい一冊です。
2026年08月10日
結婚三十年という歳月の中で、夫婦がすれ違っていく様子を描いた作品ですね。読んでいて、自分たちの人生と重ねてしまいました。 四組の夫婦の物語が織り交ぜられていますが、特に出版社勤めの佐原滝郎と妻の関係が印象深い。娘の婚約者をめぐって、夫と妻の感情が大きく分かれるくだりは、まさに長く連れ添った者同士だからこそ起こる齟齬なんだと感じました。自分たちが気づかないうちに、心の距離が生まれていることって、本当にあるんですね。 著者は夫の視点と妻の視点を丁寧に描き分けていて、どちらが正しいわけでもない、どちらも自分たちなりの理由がある――そういう人間くさい現実を見せてくれます。読みながら、妻のことをもう一度ちゃんと見つめ直してみたくなりました。文庫本のコンパクトなサイズも手に取りやすく、気軽に読めるのが良い。中年の人間関係に興味がある方なら、きっと何か得るものがあると思います。
2026年08月09日
了巷説百物語シリーズも第7巻。いやあ、毎度のことながら、この世界観の作り込みには唸らされます。憑き物落としに化け物遣い、そして洞観屋の主人。こいつらがどう絡み合うのか、そもそもどいつが本当に何を企んでいるのか……そういう複雑さが心地よい。 最初の巻から追っかけていると、登場人物たちの過去も見えてくるし、それぞれの思惑がどんどん深くなっていく様が実感できる。今回はいよいよ大仕掛けの決着とのこと。正直、ここまで来るのに長かった。でもその長さがあるからこそ、この第7巻の重みが出ている気がします。 怪異譚という形をとりながらも、人間ドラマをきっちり描き込んでいる。年寄りになると、そういう構成美が堪らんですな。気軽に手に取った時間潰しのつもりが、いつも気づくと物語の奥底まで引きずり込まれている。文庫版で手軽に読める形なのもありがたい。次の展開が気になるけど、このあたりが一つの区切りになってるんでしょうか。しばらくして、また続きが出るのを待つのも悪くない。
2026年08月07日
90年代のサブカルシーンに興味があって手に取ってみたんですが、正直なところ期待と違いました。電気グルーヴのラジオ番組がいかに伝説的だったか、という話は分かるんですけど、本書は著者の椎名氏の個人的な回想に終始しているんですね。 当時の雰囲気や時代背景をもっと広く掘り下げてほしかったのに、放送作家としての裏話や仲間との友情の話が中心で、一般読者としては少し距離を感じてしまいました。彼らの友人だからこそ知る話というのは確かに興味深いんですが、それが読者にとって本当に面白い内容になっているかは別問題です。 ラジオ番組の実際の影響力や、90年代のサブカルチャーへの具体的な貢献について、もっと客観的視点から書いてくれた方が、当時を知らない世代にもアピールしたんじゃないかと思います。思い出話としては悪くないんですが、「本」として完成度があと一歩足りないような気がしました。
2026年07月31日
定年も近いこの歳になると、世の中の大事件がどうやって世間に明かされるのか、そういうところに興味が湧いてくるんですね。この本はニクソン大統領の不正を追う二人の記者の活動を描いたものですが、読み始めたら一気に引き込まれてしまいました。 何十年も前の事件とはいえ、今読んでも色褪せない緊迫感があります。二人の若き記者が、権力の壁に立ち向かいながら真実を求めていく過程が、じつに丁寧に描かれているんです。どうやって情報を集めて、誰を信頼するのか、そういった判断の連続が物語を通じて伝わってくる。 文庫版だから気軽に読める点も気に入っています。嘱託の仕事から帰ってから、少しずつ読み進めるのにちょうどいいボリューム感です。記者たちの地道な取材活動を追うなかで、自分も一緒に真実を探している感覚に陥ってしまう。そういう引き込まれ方が、いい本の証拠だと思います。ジャーナリズムの力を改めて感じさせてくれる一冊でした。
2026年07月25日
最近、孫がPixel 10を使ってるのを見て、自分も買ってみたんですよ。でも説明書だけじゃよくわからなくて、この本を手にとってみました。 正直なところ、スマートフォンの解説書って難しいイメージを持ってたんですが、この本は違いました。フルカラーの画面写真をたっぷり使ってるので、実際の操作と本の説明がぴったり合う。目が疲れやすくなった年代にはありがたいですね。 特に良かったのは、AIのGeminiを使った機能の説明。最初は何が便利なのかピンとこなかったんですが、この本を読むと「ああ、こういうことか」と納得できます。文書の要約や音声文字起こしなんて、これまでは考えもしなかった機能。自分の使い方だと確実に活躍する場面がありそうです。 少し欲を言えば、もう少し初心者向けの基本的な部分を厚くしてほしかった気もします。でも全体的には、この世代でも十分に使いこなせるようになる、良い入門書だと思いますよ。
2026年07月25日
このシリーズもついに11巻。毎回楽しみに読んでいるんですが、今回も期待を裏切りませんでした。 山暮らしという題材だけで十分興味深いのに、登場人物たちの関係が深まっていくのが実にいい。佐野さんと山唐さんの交流が増えてくるあたり、読んでいて微笑ましくなります。田舎での人間関係ってこういうものだなと、こちらもほっこりさせられました。 そして何といっても、ニワトリにトラネコ、そして今回登場する巨大な「もふもふたち」。動物たちのキャラクターが実に活き活きしていて、彼らの行動が話の要になっているところが秀逸です。淡水魚釣りや中華料理のシーンなど、細かな日常の積み重ねが作品の味わいになっているんでしょう。 嘱託社員で毎日せわしない生活をしているからこそ、こういった山暮らしのスローライフ描写に心がときめくんです。残暑の季節を楽しみきる佐野たちの様子を読んでいると、自分もそういった時間を持ちたくなります。書き下ろし短編も含めて、のんびり読む一冊としてお勧めです。
2026年07月24日
映画を見た後、小説版も読んでみようと手に取った一冊だ。岸辺露伴という独特なキャラクターを小説で追体験できるという点は面白かったが、正直なところ、映像化された作品を敢えて文字で読む必要があったのかなと感じてしまった。 漫画の実写映画をノベライズしたせいか、物語としては中途半端な印象を受けた。映画で見て知っているストーリーを追いながら読むので、新鮮味に欠ける。小説にしかできない内面描写や心理描写があれば良かったのだが、映像化された内容をそのまま文章にしたような進め方になっている。 ただし、露伴というキャラクターの行動原理や思考プロセスが細かく描かれている部分は、小説ならではの良さだと思う。ルーヴル美術館という舞台設定も異国情緒があって、息抜きに読むには悪くない。 年金生活に向けて、こういった気軽に読める小説はありがたいのだが、わざわざ小説版を買うほどの内容ではなかったというのが正直なところ。映画で十分満足できる作品だった。
2026年07月20日
麻雀仲間が「手牌読みで差がつく」と勧めてくれたので、手にとってみました。正直なところ、牌効率や押し引きは何年か打ってりゃ自然と身につくもんだと思ってたんですが、この本を読んでハッとしました。相手の手の内を読む技術って、ここまで体系的に学べるんですね。 著者が40個の法則に絞って、それぞれの信用度や実戦での使いどころを丁寧に説明してくれているので、理屈としてすんなり入ってくる。マンガ形式だから読みやすいし、途中の著者イラストもクスッと笑えます。例題を解きながら進めていくので、ただ読むだけじゃなく実際に考えるクセがつく感じです。 一度だけじゃなく何度も読み返して身につけるタイプの本だと思います。実際、一読目は「へえ、そんなもんか」くらいでしたが、二度目三度目で「あ、あの局面ってこの法則が使える」みたいに気づくことが増えました。気軽に楽しむ麻雀ですが、こういう工夫ができるようになるのは嬉しいですね。ちょっと上達したい人にはいい本だと思いますよ。
2026年07月18日
仕事もひと区切りついたこの頃、昔から気になっていた『異邦人』をようやく手に取りました。文庫本の扱いやすさもあって、通勤電車の中での読書にぴったりでしたね。 はじめは主人公ムルソーの行動の不自然さに戸惑いました。常識的な人間らしい反応がない。でも読み進むうちに、その「ズレ」こそが作品の核なのだと気づかされます。論理的で秩序立った世の中が、実は不合理で矛盾に満ちているんじゃないか。そんなことを考えさせられました。 カミュの思想は難しいと思っていたのですが、この物語の構成は意外とシンプル。だからこそ心に残るのかもしれません。人間とは何か、生きることの意味とは何かを問い続ける作品。六十を過ぎて読むと、妙に胸に響くものがあります。 古典だからと敬遠するのはもったいない。時間をかけてゆっくり噛み砕きながら読む価値のある一冊だと思いました。
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