本と珈琲の本棚
感想

結婚三十年という歳月の中で、夫婦がすれ違っていく様子を描いた作品ですね。読んでいて、自分たちの人生と重ねてしまいました。 四組の夫婦の物語が織り交ぜられていますが、特に出版社勤めの佐原滝郎と妻の関係が印象深い。娘の婚約者をめぐって、夫と妻の感情が大きく分かれるくだりは、まさに長く連れ添った者同士だからこそ起こる齟齬なんだと感じました。自分たちが気づかないうちに、心の距離が生まれていることって、本当にあるんですね。 著者は夫の視点と妻の視点を丁寧に描き分けていて、どちらが正しいわけでもない、どちらも自分たちなりの理由がある――そういう人間くさい現実を見せてくれます。読みながら、妻のことをもう一度ちゃんと見つめ直してみたくなりました。文庫本のコンパクトなサイズも手に取りやすく、気軽に読めるのが良い。中年の人間関係に興味がある方なら、きっと何か得るものがあると思います。

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