本棚の住人の本棚
生のみ生のままで 下

生のみ生のままで 下

綿矢 りさ 集英社 2019年6月26日

感想

綿矢りさの新作ということで期待して読み始めたんですが、正直なところ、想像していた輪郭と少しズレた感じがしました。 女性同士の恋愛を描くことで、社会的な制約から解放されていく二人の姿を描きたかったんだろうなというのは伝わってくるんです。特に「常識も世間体も意識から鮮やかに取り払い」という表現には、著者の想いが込められているのが感じられます。 ただ、下巻として物語が進む中で、感情的な説得力がもう少し欲しかった。思わぬ試練が訪れるくだりも、設定としては興味深いのに、そこから二人がどう選択していくのか、その心の動きがやや駆け足な印象を受けました。 愛する人との関係が世間と衝突するときの葛藤って、もっと粘着質に、もっと複雑に描かれてもいいんじゃないかなと。綿矢りさんならそれが得意なはずなのに、という期待値が高かった分、ちょっと物足りなく感じたのかもしれません。 悪い本ではないんですけど、もう一段階、心に刺さるような何かが欲しかったな。そんな読後感です。

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