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感想

本屋大賞ノミネート作ということで手に取った『spring』。10年の構想期間を経た作品というだけで、著者の覚悟のようなものが感じられます。 バレエという表現芸術を通じて、一人の天才舞踊家の人生を描いた作品ですが、これが実に奥深い。教員生活が長いせいか、才能と努力、そして時代との出会いが人を形作っていく過程が、強く心に響きました。萬春という主人公の名前自体が「あらゆる季節を抱く」という意味だとは、細かい工夫です。 物語は少年時代から国際舞台での活躍まで、時間軸を巧みに操りながら展開します。「踊る者、作る者、見る者、奏でる者」という複数の視点から一人の人物像が立体的に浮かび上がってくる構成は、『蜜蜂と遠雷』を彷彿とさせながらも、また異なる魅力を放っています。 バレエの世界についての知識がなくても、表現者の本質的な葛藤や美しさが伝わってきます。「俺は世界を戦慄せしめているか?」という問いが、読み進むたびに重みを増していく。教室で教えることの意味を改めて考えさせられた、そんな一冊です。