はるかの本棚
モンテーニュ 旅日記(上)

モンテーニュ 旅日記(上)

モンテーニュ / 宮下 志朗 岩波書店 2026年2月16日

感想

『エセー』で名高いモンテーニュが、出版直後に敢行した欧州への長旅。その旅先で綴られた日記という、これはなかなか興味深い企画だと思い手に取りました。 16世紀の中部ヨーロッパを巡る様子が克明に記されており、当時の旅のありようや土地の風俗、温泉地での湯治といった日常的な出来事が、観察眼鋭い知識人の筆で活き活きと描かれています。モンテーニュがどのような眼差しで世界を見ていたのかを知る手がかりとしては、一定の価値があります。 ただ、率直に申し上げると、現代の読者にとっては若干単調に感じられるかもしれません。『エセー』で期待される思想的な深さや、人間観察の鮮烈さが、旅日記という形式では少し弱まっているように思われます。また、細かな移動経路や宿泊地の記述が続く箇所では、どうしても息切れしてしまいました。 職業柄、様々な背景を持つ部下と関わる中で、異文化理解の大切さを痛感している身としては、こうした古い旅の記録にも惹かれるのですが、今作は知的興趣と読み心地のバランスが、私にはやや物足りなかったというのが正直な感想です。

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