三国志 7(完訳)
岩波書店 | 1988/07/07
みんなの感想
岩波書店の完訳版という触れ込みに惹かれて、この最終巻に挑戦しました。歴史冒険小説の傑作として名高い『三国志演義』ですが、正直なところ、これまでのシリーズを通じて感じた印象はそのままです。 確かに劉備と孔明、曹操といった個性的な人物たちが知略と武勇を尽くして戦う場面は圧倒的で、七巻という長大な物語がようやく統一に至るまでの壮大さは認めます。葛飾載斗の版画も品格があり、読む手を進めます。 しかし、管理職として多くの部下を率いている立場からすると、人物描写の深さや動機づけに物足りなさを感じずにはいられません。英雄たちの決断が時に唐突に見え、戦略よりも運命めいたものに左右される展開も目立ちます。古典としての価値は十分理解しますが、現代人の感覚で読むと、その点で引っかかるのです。 翻訳の明晰さと美しさは本当に素晴らしいのですが、話題作として手にした際の「読んでよかった」という達成感は、正直そこまで大きくありません。入門書としては良いでしょう。
岩波書店の完訳版ということで、正統的な『三国志演義』の翻訳を読みたくて手に取りました。第7巻ということで物語も佳境。劉備の蜀建国から統一への流れまでが描かれているわけですが、正直なところ、これまでの巻と比べて新鮮さが薄れてきた感覉を受けました。 孔明の知略や各武将の活躍自体は相変わらず興味深いのですが、後半に進むにつれて描写がやや冗長に感じられます。同じようなパターンの戦闘シーンが繰り返される部分も多く、読んでいて少し退屈してしまった場面もありました。 ただし、葛飾載斗の版画は本当に素晴らしい。挿絵の質感や構図の工夫が、物語の世界観をより立体的に演出してくれています。翻訳の品質も高く、気品ある文体で読みやすいというのは確かです。 全体としては、古典としての価値と翻訳の良さは認めつつも、エンタメ性という点では期待値より少し下回った印象。シリーズを追ってきた読者にとっては完読の義務感もありますが、この一巻だけで判断すると「悪くはないが、最高傑作とは言えない」というのが率直な感想です。
ついに完訳版の最終巻を読み終えた。七巻まで通して読むのは正直なところ時間がかかったが、その甲斐は十分あった。 岩波書店の完訳決定版というだけあって、文語体の清潔で格調高い日本語が心地よい。管理職として働く身には、劉備や孔明の采配、曹操の知略といった部分に仕事との重なりを感じながら読むことになる。ただし、ここで面白いのは、そうした実利的な読み方もできれば、純粋に英雄豪傑たちの人間関係や運命の興亡を物語として楽しむこともできる点だ。 葛飾載斗の版画も秀逸で、想像力を刺激してくれる。三国時代の騎馬戦や城砦の景観が生き生きと浮かぶ。 七巻という長さは決して短くないが、気負わずに、時間をかけて読む価値のある作品だと思う。人生経験を積んだ年代だからこそ、登場人物たちの野心や葛藤、そして衰退していく者たちの哀感がより深く心に届くのだろう。男性なら一度は完全版で読んでおくべき名作である。