はるかの本棚
感想

岩波書店の完訳版という触れ込みに惹かれて、この最終巻に挑戦しました。歴史冒険小説の傑作として名高い『三国志演義』ですが、正直なところ、これまでのシリーズを通じて感じた印象はそのままです。 確かに劉備と孔明、曹操といった個性的な人物たちが知略と武勇を尽くして戦う場面は圧倒的で、七巻という長大な物語がようやく統一に至るまでの壮大さは認めます。葛飾載斗の版画も品格があり、読む手を進めます。 しかし、管理職として多くの部下を率いている立場からすると、人物描写の深さや動機づけに物足りなさを感じずにはいられません。英雄たちの決断が時に唐突に見え、戦略よりも運命めいたものに左右される展開も目立ちます。古典としての価値は十分理解しますが、現代人の感覚で読むと、その点で引っかかるのです。 翻訳の明晰さと美しさは本当に素晴らしいのですが、話題作として手にした際の「読んでよかった」という達成感は、正直そこまで大きくありません。入門書としては良いでしょう。

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