最近、自営業をしていて思うのは、社会の約束事って本当に窮屈だということだ。この本を読んでいて、そんなモヤモヤした気持ちがストンと腑に落ちた。 主人公の響が「おばさん」に惹かれていく様子が、実に自然で良い。結婚だとか、やりがいだとか、そういった一般的な人生設計に縛られている若い世代が、型破りな生き方をしている中年女性と出会うことで、ゆっくりと解放されていく過程が丁寧に描かれている。 何より好ましいのは、説教的でないところだ。「こう生きるべき」という押しつけがなく、むしろ「こんな生き方もあるんだ」という気付きを優しく与えてくれる。響とおばさんの関係が深まるにつれて、読んでいる自分自身も肩の力が抜けていくような感覚を覚えた。 自営業で日々プレッシャーを感じている僕にとって、この本は思いがけない処方箋になった。人生に「正解」なんてないんだ、と改めて教えてくれた気がする。等身大の女性たちの物語として、多くの人に読んでもらいたい一冊だ。
最近登録された他の本の感想
2026年06月01日
久しぶりにマンガを手に取ってみた。仕事の疲れた頭をリセットするには、やっぱり漫画が一番だ。 子どもの頃に読んだドラゴンボールは、今でも心に残る傑作だ。改めて英語版の第一巻を読んでみると、当時の興奮がよみがえってくる。鳥山明の絵のキレの良さ、テンポの良さは本当に素晴らしい。悟空という主人公のキャラクターの立ち方も秀逸で、冒険への憧れがこちらにも伝わってくる。 ただ、右から左への読み方には最初戸惑った。日本語版に慣れているから、ページをめくる方向が逆になると、リズムが崩れる。でも数ページ読めば慣れるものだ。むしろ、この形式で世界中の人が楽しんでいるのかと思うと、作品の普遍的な魅力を改めて感じさせられる。 懐かしさと新しさが同時に味わえる、不思議な読書体験だった。自営業で毎日忙しい身だからこそ、こうした単純で純粋な楽しみって大事だと思う。また続きを読みたくなった。
2026年06月01日
親の代の世話でスマホの使い方について相談されることが増えたので、どんな本があるのか興味を持って手に取ってみました。 著者の埼玉スマホ教室というYouTubeチャンネルの経験が活かされているのか、説明は確かに丁寧で親切です。電話とLINEだけで十分だと思っている層に向けた構成で、無理なく次のステップへ進めるような工夫が感じられます。音声入力から地図、カレンダー機能まで、日常生活で実際に役立つ機能を取り上げているのは好印象です。 ただし、正直なところ新鮮さには欠けます。スマホの基本的な使い方を丁寧に解説した類の本は、もう十分に世の中に溢れているのが実感。デザインも見出しも、特に工夫されているようには見えません。自営業の傍ら新しいツールを学ぶ身としては、もう一歩踏み込んだ活用法や視点があれば良かったと思います。 親への説明に使えるかもしれないという実用性は認めますが、自分自身が読んで学ぶには、ちょっと物足りないというのが率直な感想です。
2026年05月06日
歴史冒険小説として、これはなかなかの傑作だ。豊臣家の成り上がりを元浅井氏の与一郎という視点から描く設定が面白く、一気に引き込まれた。 秀吉と官兵衛、半兵衛といった名将たちが織りなす戦略の綾、そして与一郎一家が抱える義理と現実のジレンマが丁寧に描かれている。特に印象的なのは、非情な采配を下す秀吉と、それに翻弄される主人公の葛藤だ。権力のために理想を曲げるのか、それとも……という問題は今の時代にも通じるものがある。 シリーズ七巻目ということだが、この巻は人物たちの感情的な揺らぎと戦場での緊迫感が上手く両立している。文庫本という気軽さで、こうした歴史冒険小説を楽しめるのは素晴らしい。著者の筆の運びも堅すぎず、スッと物語の世界に入っていける。 自営業で忙しい日々だからこそ、こういった歴史冒険小説でリフレッシュできるのはありがたい。続きが気になる一冊だ。
2026年05月06日
この本、いや本当に面白かった。可児キリコという記者が銀座のクラブ潜入から沖縄のリゾートホテルへと舞台を移して巻き込まれる殺人事件。バブル末期という時代背景も相まって、どこか懐かしくも切迫した緊張感が漂っている。 印象的だったのは、事件の謎解きの巧妙さだ。高所恐怖症という設定が伏線として機能していて、その仕掛けに気づいた時の快感。単なるミステリーではなく、時代が生み出した欲望や矛盾が事件の背景に横たわっている。もう一つの話線である牧薩次の別荘地での事件も同じテーマで響き合っていて、バブル期の日本社会を鮮烈に浮き彫りにしている。 文体も読みやすく、ページをめくる手が止まらなかった。このくらいの気軽さで読める長編が好きな身としては、まさに求めていた一冊。三十年以上前の作品とは思えないリアリティがある。今こうしてバブル時代を振り返る年代だからこそ、より一層その時代の空気感が蘇ってくるのかもしれない。傑作です。
2026年04月03日
行政書士試験の受験を検討していた時期があるので、試しに目を通してみました。 この問題集の構成は実に合理的で、左ページに問題、右ページに解答という見開き設計は効率的です。重要度がA・B・Cで分けられているのも、メリハリのある学習ができるという点では良い工夫だと思います。付属の赤シートや講義動画も、実際に試験対策をする人には役立つのでしょう。 ただ、自営業で時間に余裕がなく、結局腰を据えて勉強するまでには至らなかった身からすると、正直なところ利用し切ることができませんでした。解説は詳しいのですが、やはり実際の試験対策には相応の時間投資が必要。本気で合格を目指す人には頼りになる一冊だと思いますが、様子見程度の興味では宝の持ち腐れになりかねません。 試験対策の実用性としては申し分ないものの、個人的な使途を考えると、期待通りのニーズを満たせたとは言えない印象です。
2026年03月24日
三島屋シリーズも第五巻。すっかり虜になってしまいました。おちかの成長の物語として始まったこのシリーズが、ここまで来ると本当に味わい深い。 今回の貸本屋の若旦那が語る「読む者の寿命を教える冊子」の話は、実に不気味でありながら、どこか儚い。自営業をやっていると、時間の大切さについて考えさせられることが多いのですが、この話はそうした思いをぐっと刺激してくれました。 おちかが何か大切な決断をする場面も感動的。シリーズを通じて彼女がどう変わっていったのか、その軌跡が見える作り方が本当に素晴らしい。怖い話ばかりなのに、読んだ後には心が温かくなる。そのバランス感覚が宮部みゆき作品の真骨頂ですね。 第一期完結という区切りも絶妙。気軽に手に取った時間小説のつもりが、こんなに惹き込まれるとは。続編も当然待ち遠しいです。
2026年03月21日
流行りのなろう系作品がついに書籍化されたということで、試しに読んでみました。 正直なところ、期待値と現実のギャップといったところでしょうか。ネット連載で100万PVを超えるほどの人気作らしいですが、書籍版を読んでみると、ありがちなテンプレートをうまくまとめた、という感じです。転生者が強くなる、ヒロイン候補が次々と現れる、という展開は、このジャンルではもう見慣れたパターンですね。 ただ、完全につまらないわけではありません。世界観の設定は面白いし、呪いとか魔術といった要素の扱いには工夫が感じられます。テンポもよく、サクサク読み進められるのは自営業で忙しい身としては助かります。 でも、自分の年代になると、やはり人間関係の深さや、もう少し思想的な奥行きを求めてしまいます。エンタメとしては悪くないんですが、読み終わった後に何か残るような余韻がほしかったな、というのが本音です。若い読者なら、もっと楽しめるんじゃないでしょうか。
2026年03月13日
25周年記念ということで思わず手を取ってしまいました。装丁は確かに素晴らしい。漆黒の布装に各巻を象徴する金箔のアイコン、見た目だけで欲しくなるようなセットです。城所潤さんのデザイン、さすがですね。 ただ、正直に言うと内容面では特に新しい発見はありませんでした。既に読んでいる人間にとっては、つまりこれは装丁目当てのセットだということですね。もちろん、初めて読む人や、子どもへのプレゼントにはいいでしょう。ハリー・ポッターのストーリーは変わらず面白いですから。 自営業で忙しい身としては、ボックスセット購入で全巻揃えるメリットよりも、既に持っている本がダブってしまう微妙さが先に立ってしまった。記念版として珍重する気持ちはわかりますが、この価格を出すなら、既読者向けに何か特別な追加企画があってもよかったのでは、と思います。 気軽に読む小説の相手としては上出来ですが、セットとしての「特装版」という触れ込みに対しては、少し物足りなさが残りました。
2026年03月08日
直木賞受賞作ということで手に取ってみました。北海道の廃れた炭鉱町を舞台にした連作短編という設定は興味深く、心身を疲弾させた元刑事が事件に立ち向かう姿勢も引き込まれるポイントです。 ただ、正直なところ、読んでいて「なるほど」と唸らせる深さや、グッと心をつかむような瞬間が物足りなく感じました。それぞれの短編は丁寧に書かれているのですが、全体として連作としての統一感や、各篇をつなぐ強い何かが欲しかった。刑事ものとしては定番的な構成の範囲を出ていないような印象もあります。 自営業で忙しい身なので、さっと読める短編集として重宝はしましたし、北海道という土地の描写は雰囲気がありました。ただし、高い期待値で手に取ると、若干肩透かしを食らう可能性は否めません。気軽な読書として、まぁまぁといったところでしょうか。
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