静かな読書の本棚
月とコーヒー ノクターン

月とコーヒー ノクターン

吉田篤弘 徳間書店 2026年4月1日

感想

吉田篤弘さんの『月とコーヒー』シリーズは、もう何年も前から手放せない存在になっています。今回の第3集『ノクターン』も期待通り、いや期待以上の満足感を得られました。 何が素晴らしいって、短編集としての完成度の高さですね。原稿用紙10枚程度という長さは、自営業で忙しい身にはちょうどいい。朝のコーヒーの時間に一編読むと、その日一日が少し違う色に見えるような、そんな不思議な力があります。 各話に登場する、月に思いを馳せる小さな猿だとか、種も仕掛けもない手品をするマジシャンだとか、なんともユニークなキャラクターたちが、さっとストーリーの中に溶け込んでいく。読んでいて息苦しさがない。むしろ心地よい静けさに満たされます。 既読シリーズとの相乗効果もあるかもしれませんが、このシリーズを通じて吉田さんの世界観にはますます引き込まれています。気軽に開けて、深い余韻を残していく。そういう上質な読書体験が、このシリーズの変わらぬ魅力なんだと改めて実感しました。