静かな読書の本棚
探偵小石は恋しない

探偵小石は恋しない

森 バジル 小学館 2025年9月18日

感想

本の帯に「ネタバレ厳禁」と大きく書かれていたので、期待値を高くして手に取った。その判断は正解だった。 探偵小石のキャラクターが実にいい。ミステリマニアなのに依頼は浮気調査ばかり、という地味ながら人間味のある設定。その小石が色恋案件に「病的に得意」という秘密を持っているくだりから、物語の深さが見えてくる。作者は単なる謎解きの快感だけでなく、登場人物の弱さや葛藤をしっかり描き込んでいるんだ。 中盤から思いもよらない真相が明かされ、表面的には地味な色恋調査の奥底に隠された大きな事件が浮かび上がってくる構成は見事の一言。自営業で日々現実的な判断を迫られる身からすると、こういう「だから奴はそう動いたのか」という納得の瞬間が本当に心地いい。 松本清張賞を受賞した新鋭ということにも納得。上質なミステリの文法をきちんと守りながら、読み手の想像を巧妙に誘導する手腕は本当に洗練されている。気軽に読めるのに、読み終わったあとに「やられた」という感覚が残る。これぞ本格ミステリの醍醐味だと思う。