和子の本棚
若き日の詩人たちの肖像(下)

若き日の詩人たちの肖像(下)

堀田 善衞 集英社 1977年10月1日

感想

昭和初頭の時代背景と、若き青年の心情の揺らぎが繊細に描かれた作品です。下巻を読み終えた時の感慨は格別でした。 北陸の旧家から出てきた少年が、激動の時代の中でどのように大人になっていくのか。その過程で出会う人々との関係性が、本当に丁寧に紡ぎ出されています。特に印象的だったのは、暗く重い社会情勢の中にあっても、青年の心に宿る詩的な感性が決して消えることがないという部分です。 上巻から続く物語ですが、下巻でようやく事件の全貌が明かされ、登場人物たちの運命がどのように交差していくのかが見えてきます。歴史的事実を背景にしながらも、あくまで個人の内面に焦点を当てた描写が秀逸です。 この年代になると、戦前戦後の時代を舞台にした作品に深い共感を覚えるようになりました。自分の祖父母の世代が経験した時代がどのような空気感だったのか、この作品を通じて少し理解できた気がします。話題作として手に取りましたが、こういった古典的な価値を持つ長編こそ、人生経験を積んだからこそ味わえるものがあるのだと改めて感じました。

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