若き日の詩人たちの肖像(下)

若き日の詩人たちの肖像(下)

堀田 善衞

出版社:集英社 出版年月日:1977/10/01

集英社 | 1977/10/01

3.33
本棚登録:6人

みんなの感想

感想

下巻を読み終わって、率直に言うと期待と現実のズレを感じました。2・26事件という歴史的背景の中で描かれる青年の内面世界は、確かに興味深いテーマです。ただ、全体的な構成や叙述のテンポが、私には少し入り込みにくいところがありました。 文学的な価値や歴史的な重要性を否定するわけではありません。むしろそうした点は十分に感じられます。ですが、読み進める中で、描写の厚みと物語の推進力のバランスが、私の好みとはやや合致しませんでした。下巻だけの問題ではなく、全体を通じて、もう少し明確な軸足があれば良かったかもしれません。 会社員として忙しい毎日の中で読む本だからこそ、慎重に選びたいという思いが強いのですが、この作品は確かに意欲作です。ただし、すべての読者にお薦めできるかといえば、その辺りは個人差が出るかもしれません。時代小説や自伝的作品が好きな方なら、違う評価もあるでしょう。限定的ながら、読む価値のある一冊ではあります。

感想

下巻を読み終えて、やはりこの作品は秀逸だと思う。昭和初頭という激動の時代背景のなかで、北陸の旧家から上京した少年の内面世界がこれほど繊細に、かつ力強く描かれるとは。2・26事件という歴史的な局面と個人の精神的遍歴が見事に絡み合っている。 特に印象的だったのは、青春期の感受性の鋭さと、時代の暗さがぶつかるときの描写の迫力である。著者の実体験に基づいているだけあって、どの場面も説得力に満ちている。この年代になると、若き日の詩情への共感とともに、歴史を学ぶものとしての深い思索が起こる。 上巻から続く物語を下巻で読了した今、単なる歴史小説ではなく、一個の人間がいかに時代と格闘し、精神的に成熟していくかを描いた傑作であることが確認できた。じっくり、慎重に読み進めるべき価値のある一冊である。多くの読書家に勧めたい作品だ。

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