和子の本棚
感想

話題になっていたこの作品、ようやく読むことができました。2011年の震災直後という背景設定に、最初は重い内容を覚悟していたのですが、一匹の犬との出会いがこんなにも人を変えることができるのだなと、本当に心を打たれました。 主人公の和正が困窮の中で拾った野良犬・多聞との関係性が、物語全体を通じてじわじわと温かく描かれていて、読み進めるうちに自然と涙ぐんでいる自分に気付きました。犬を飼ったことのある私だからこそ、その繋がりのありようがより深く響いたのかもしれません。 印象的だったのは、多聞がいつも南を向いているという謎の描写です。物語が進むにつれて、その意味するところが徐々に明かされていく構成も秀逸です。震災という大きな悲しみの中で、人間が何を大切にするべきか、何に支えられて生きているのかを考えさせてくれます。 誰もが傷つき、疲れた時代だからこそ読まれている理由がよくわかりました。犬好きな方はもちろん、人間らしさについて考えたい方にぜひおすすめしたい一冊です。

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