直人の本棚
憂鬱な恋の忘れ方

憂鬱な恋の忘れ方

カツセマサヒコ 幻冬舎 2026年10月21日

感想

話題になっているこの作品、やはり読む価値があった。久しぶりに恋愛小説で心を揺さぶられた経験をした。 大学生の淡い恋から始まる物語なのだが、年を重ねた自分だからこそ、この切実さが痛いほど理解できる。若い頃に失った恋の痕跡が、大人になってからもじわじわと蘇ってくる——そんな誰もが心の奥底に抱えている感情をこれ以上なく丁寧に描いている。SNSの登場という現代ならではの設定も秀逸だ。完全には断ち切れない、何度も繰り返し思い出す、その葛藤が生々しい。 著者の『明け方の若者たち』を読んでいたので期待値は高かったが、それを上回る完成度。社会人として日々の業務に追われる毎日の中で、ふっと心に引っかかるあの人のこと。そういった大人の恋愛の複雑さを、小説という形で改めて照射されるのは新鮮だった。失恋とどう向き合うのか、その一つの答えが見える気がする。仕事の合間の読書時間が、こんなに濃密になるとは思わなかった。確実に推しの一冊。

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