なぜ日本は没落するか

なぜ日本は没落するか

森嶋 通夫

出版社:岩波書店 出版年月日:2010/07/16

岩波書店 | 2010/07/16

4.00
本棚登録:2人

みんなの感想

感想

1990年代末に著されたという時代背景を知ると、本書の予測性の高さに改めて驚かされます。著者が指摘した日本の構造的問題は、残念ながら現在でも大きな課題として存在しており、その洞察の鋭さは確かです。 ただし、読み進めていて感じるのは、分析は秀逸でありながら、提示される解決策には物足りなさが残るということです。金融・産業・教育の欠陥を舌鋭く指摘する部分は説得力がありますが、東北アジア共同体構想へと進む段階で、やや観念的になってしまう印象を受けました。現実的な実行可能性についての議論が今ひとつ深掘りされていないように思います。 当時、このような警告が発せられていたにもかかわらず、日本がその後もなかなか構造改革できなかった経緯を考えると、予見の正しさと実現の困難さのギャップが、かえって無力感を喚起されます。歴史的な資料として読む価値はありますが、現在の読者にとって新たな処方箋を提供してくれるかというと、疑問が残るというのが正直なところです。

感想

1990年代末の著作とは思えないほど、その診断の正確さに驚愕した。四半世紀を経た今、日本の直面している課題の多くが既に本書で指摘されていたのだ。 金融・産業・教育システムの構造的な問題を、単なる経済論ではなく日本人の精神性という根本に遡って分析する視点が秀逸である。フリーランスとして経済活動に直結する立場から読むと、指摘の切実さがより一層身に沁みる。 特に興味深いのは、著者が問題の原因を外部環境ではなく、われわれ自身の内面と構造に見出している点だ。これは耳障りの良い「日本の潜在力」論とは異なり、冷徹な現実認識に基づいている。 提示される「東北アジア共同体」構想については、現在の政治状況を踏まえると多くの課題があろう。しかし、従来の枠組みを超えた思考の必要性は、ますます明らかになっている。 古い本であるがゆえに、時間の経過が検証となった稀有な著作。日本の状況を深く考えたい者にとって、必読の一冊である。

ブクログからブクマへ
かんたん引っ越し

読書記録や感想をそのまま移行。
数分の準備で、ブクログの本棚をブクマへ。

詳しく見る
ブクログからブクマへの引っ越しイメージ