直人の本棚
九十歳。何がめでたい

九十歳。何がめでたい

佐藤 愛子 小学館 2016年8月1日

感想

映画化が決定したというニュースで手に取った一冊だ。佐藤愛子さんは我が世代の大先輩で、これまでの作品もいくつか読んでいるが、このエッセイには彼女の真骨頂が詰まっていると感じた。 九十歳を迎えた著者が「何がめでたい」と言い放つタイトルの通り、世間一般の老年礼賛など一切ない。むしろ老いの不便さ、人間関係の煩雑さ、社会への違和感を率直に、時にはユーモアを交えて綴っている。自分も五十代後半に差し掛かり、いずれ迎える老年期について、どう向き合うべきかを考えさせられた。 興味深いのは、著者がこの本を執筆するに至った背景だ。完成した最後の大作を後に、一度は筆を置くはずだったのに、再び立ち上がった創作の衝動。その結果として生まれたこのエッセイは、かえって自由で、ときに毒舌的で、驚くほど現代的だ。 正直に自分の気持ちを言葉にする、そうした姿勢の大切さを改めて学んだ気がする。人生の先輩からの、等身大のメッセージだと思った。

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