直人の本棚
プラハの古本屋

プラハの古本屋

千野栄一 中央公論新社 2025年8月21日

感想

プラハという歴史ある古都を舞台にした本書は、言語学者による深い思想と暖かいまなざしが心地よい一冊だ。 著者が古本屋での出会いを通じて紡ぎ出す物語は、単なる旅エッセイではない。ことばの本質、文化の層積、そして人間関係の機微について、さりげなく読者に考えさせてくれる。言語学の専門知識が息づいているにもかかわらず、難解さはなく、むしろプラハの街角でビールを飲みながら誰かの話を聞いているような親密感がある。 会社勤めも長く、人間関係の疲れを感じることもある年代にとって、このエッセイのユーモアと優しさは格別だ。著者が古本を通じて出会う人々との関係性の描き方に、仕事では味わえない充足感を感じた。 最近話題の本として耳にしていたが、読んでみて納得できた。文化への造詣と執筆の技巧が相まって、良質な読書体験になっている。プラハへの関心がなくても、ことばと旅を愛する読者なら確実に楽しめるだろう。

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