三浦の本棚
深呼吸の必要

深呼吸の必要

長田弘 角川春樹事務所 2018年10月1日

感想

仕事で疲れた日の夜、ふと手に取った一冊です。長田弘の散文詩集とは知っていましたが、実際に読むまでは詩集への敷居の高さを感じていました。ただ、期待以上の収穫がありました。 本書の魅力は、その親しみやすさにあります。「大人になるって何だろう」という素朴で誰もが一度は考える問いから始まり、日常の風景の中に世界の豊かさを丁寧に拾い上げていく。通勤電車の中での人間観察も、子どもの頃の思い出も、ごくありふれた風景ばかりなのに、言葉によってそれらが輝き始める感覚は、まさに幸福です。 35年生きてくると、人生に深呼吸が必要な局面がいくつも訪れます。そういう時、この本の言葉たちがそっと背中を押してくれる感じがしました。特に、子ども時代の「きらめき」を大人の視点から再発見する部分には、自分自身の人生を改めて見つめ直すきっかけをもらいました。 短編ばかりですので、忙しい毎日の中でも読み続けやすい。これまで詩集を避けていた自分を反省するほどの傑作です。