山口の本棚
ゆっくり急げ

ゆっくり急げ

ヤマザキマリ 中央公論新社 2026年9月7日

感想

ヤマザキマリのエッセイ集を手に取ったのは、彼女の漫画作品『テルマエ・ロマエ』が好きだったから。でも実際に読んでみると、小説とはまた違う魅力に引き込まれました。 イタリアと日本を行き来する人生、息子の成長、家族との別れ、パンデミック中の日常など——どれもとても個人的で、でもどこか普遍的な出来事ばかり。特に、人生が思い通りにならないことで溢れているからこそ面白い、という彼女の視点がいいんです。私たち中年世代が経験する、諦めと受け入れの先にある前向きさが詰まっている。 一篇一篇が短いから、仕事で疲れた日の夜も気軽に読める。それでいて、ふっと立ち止まって人生について考えさせられるような深さもある。漫画家として30年のキャリアを持つ人だからこその、デッサン的な観察眼と表現力が光っています。 完璧さを手放してゆっくり急ぐ——その言葉の響きが、今の私には心地よく感じられました。もう一度読み返したい一冊です。

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