透明な夜の香り

透明な夜の香り

千早 茜

出版社:集英社 出版年月日:2023/04/20

集英社 | 2023/04/20

4.50
本棚登録:2人

みんなの感想

感想

渡辺淳一文学賞を受賞した話題作ということで、さっそく手に取ってみました。「香り」という感覚を軸に物語を紡いでいく、とても新鮮な着想です。 調香師という職業が主軸になっているのですが、決して専門知識の押し付けにはなっていません。むしろ、香りがいかに人の記憶や感情と深く結びついているかを、物語を通じて自然に理解させてくれます。人並み外れた才能を持つ主人公の孤独感、そしてそれを理解していく登場人物たちとの関係性が丁寧に描かれているところが素敵です。 パート勤務で毎日を忙しく過ごしている私にとって、この本は読むたびにどこかほっと落ち着かせてくれる何かがあります。洋館という舞台設定も上品で、物語の世界に引き込まれやすいです。途中から登場人物たちの秘密が徐々に明かされていく過程も上手く、最後まで離れられませんでした。 最近の流行りの本も大切ですが、こういった丁寧に人間関係を描いた作品も、やはり深い魅力があるんだと改めて感じました。

感想

渡辺淳一文学賞受賞作ということで手に取ったが、期待以上の傑作だった。 調香師という独特の職業設定が秀逸で、「香り」を通じて人間の深層心理に迫る手法は新鮮だ。主人公・一香が古い洋館で出会う調香師・朔との関係性が少しずつ織り交ぜられていくプロット構成も見事。依頼人たちが抱える秘密や想いが香りという形で表現されることで、文章を読むだけでも五感が刺激されるような感覚を覚えた。 人間関係が多忙な中年サラリーマンの身としては、朔のキャラクター描写に特に共感させられた。天才的な才能を持ちながらも「孤独」と向き合う様子は、仕事の環境では見えない深い感情の世界を表現しており、そこに千早茜の筆力の高さが感じられる。 文学賞受賞作だからと身構えずに読めるドラマティックな長編で、最後まで一気読みしてしまった。この手の話題性の高い文学作品は最近のトレンドだが、この作品はその期待を十分に超える仕上がり。ぜひ多くの読者に読んでほしい一冊だ。

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